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インフルエンザウイルスゲノムの核内動態に関わる宿主タンパク質を同定

インフルエンザウイルスゲノムの核内動態に関わる宿主タンパク質を同定

Nature Microbiology 5月16日オンライン版 DOI番号:10.1038/nmicrobiol.2016.62
Tomomi Ando, Seiya Yamayoshi, Yuriko Tomita, Shinji Watanabe, Tokiko Watanabe & Yoshihiro Kawaoka
The host protein CLUH participates in the subnuclear transport of influenza virus ribonucleoprotein complexes

東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループは、細胞の核内で複製されたインフルエンザウイルスゲノムが複製された場所から輸送(核内輸送)されるのに関わる宿主のタンパク質としてCLUH(clustered mitochondria protein homolog)を同定しました。
 河岡義裕教授が2014年に発表した網羅的な解析から同定されたウイルス増殖に寄与する宿主因子を詳細に解析した結果、CLUHがウイルスゲノムの核内輸送に関わることを突き止め、核内におけるインフルエンザウイルスゲノムの核内動態の一端を初めて明らかにしました。
 これまで、ウイルスゲノムの複製とウイルスゲノムの核外輸送複合体の形成は、核内のクロマチン領域で起きると報告されてきました。ところが、ウイルスの増殖に必要な「複製」と「複合体形成」が細胞核内の同じ場所で起きているかどうかは不明でした。本研究において、クロマチン領域で新規に複製されたウイルスゲノムは、核内を移動した後に、核外輸送複合体が形成される領域へ到達することが明らかとなりました。
 通常は細胞質のみに存在するとされるCLUHはウイルス感染により核内へと移動し、複製されたウイルスゲノムを運ぶ役割に関わることがわかりました。
 本研究成果は、ウイルス感染細胞の核内でのみ見られる現象を明らかにしたものであり、特異的なインフルエンザ治療薬開発のターゲットになることが期待されます。本研究成果は、2016年5月16日(米国東部時間11:00)、英国科学雑誌「Nature Microbiology」のオンライン速報版で公開されます。本研究成果は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業、日本医療研究開発機構(AMED)革新的先端研究開発支援事業、文部科学省感染症研究国際ネットワーク推進プログラム(平成27年度~感染症研究国際展開戦略プログラム)などの一環として得られました。