東京大学医科学研究所

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発表論文解説

生まれた後の神経と筋肉のつなぎ目を守る新たな仕組み

Proc. Natl. Acd. Sci. USA doi:10.1073/pnas.1408409111
手塚 徹1、井上 茜1、星 太輔1、Scott D. Weatherbee2、Robert W. Burgess3、植田亮1、山梨裕司1
1.東京大学医科学研究所・腫瘍抑制分野、2.Yale大学・Department of Genetics、3.Jackson Laboratory
The MuSK activator agrin has a separate role essential for postnatal maintenance of neuromuscular synapses

私たちの運動機能には、運動神経を介した骨格筋収縮の緻密な制御が必要です。神経筋接合部は運動神経と骨格筋を結ぶ唯一の「絆」とも言えるつなぎ目(神経筋シナプス)であり、その喪失は呼吸を含めた運動機能の喪失を意味します。東京大学医科学研究所の山梨裕司教授らの研究グループは、これまでに神経筋接合部の形成に必須のタンパク質としてDok-7を発見し、また、そのヒト遺伝子(DOK7)の異常による劣性遺伝病として神経筋接合部の形成不全を呈するDOK7型筋無力症を発見しています。さらに、最近、神経筋接合部の形成不全を伴う様々な疾患に対する治療法として、DOK7発現ベクターの投与による「神経筋接合部の形成増強治療」をマウスにおいて創出しました(プレスリリース)。
他方、研究グループはDok-7がMuSKというタンパク質(リン酸化酵素)を活性化することで神経筋接合部を形成することも解明していましたが、MuSKにはAgrinと言う別の活性化因子の存在が古くから知られており、両者の違いが不明でした。そこで、今回、Dok-7を多量に産生することでMuSKの活性化を恒常的に増強するマウスを作出し、そのマウスにAgrin欠損を導入したところ、胎仔期に形成された神経筋接合部が誕生後の数週間で消失してしまいました(模式図)。この事実は、胎仔期のAgrin機能がDok-7の発現増強によるMuSKの活性化で補えるのに対して、生まれた後のAgrinはMuSK活性化以外の、Dok-7では代替不可能な仕組みで神経筋接合部を守っていることを意味します。
本成果は、我々が神経筋接合部をどのようにして守っているのかを理解するために重要であると共に、生まれた後に発症する多くの神経・筋疾患の理解につながる知見です。

  本研究は、文部科学省科学研究費補助金などの助成を受けて実施されました。