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発表論文解説

神経と筋肉のつなぎ目を大きくする治療法を創出 ―多様な神経筋疾患に対する新たな治療概念の確立―

Science 19 September 2014: 1505-1508. [DOI:10.1126/science.1250744]
有村 純暢1、岡田 尚巳2、手塚 徹1、千代 智子2、笠原 優子2、吉村 俊朗3、本村 政勝4、吉田 進昭5、David Beeson6、武田 伸一2、山梨裕司1
1.東京大学医科学研究所・腫瘍抑制分野、2.国立精神・神経医療研究センター・遺伝子疾患治療研究部、3.長崎大学・医歯学総合研究科、4.長崎総合科学大学・工学部、5.東京大学医科学研究所・発生工学研究分野、6.オックスフォード大学・Weatherall Institute of Molecular Medicine
DOK7 gene therapy benefits mouse models of diseases characterized by defects in the neuromuscular junction

私たちの運動機能には、運動神経を介した骨格筋収縮の緻密な制御が必要です。神経筋接合部は運動神経と骨格筋を結ぶ唯一の「絆」(神経筋シナプス)であり、その喪失は呼吸を含めた運動機能の喪失を意味します。東京大学医科学研究所の山梨裕司教授らの研究グループは、これまでに神経筋接合部の形成に必須のタンパク質としてDok-7を、また、そのヒト遺伝子(DOK7)の異常による劣性遺伝病として神経筋接合部の形成不全を呈するDOK7型筋無力症を発見しています。一方、神経筋接合部の形成不全は筋無力症のみならず、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や加齢性筋肉減少症などの多様な神経筋疾患にも関与していますが、その治療標的としての可能性は未確認でした。
研究グループは、マウスを用いた実験から、DOK7発現ベクターの投与により神経筋接合部を後天的に拡張できることを確認し、また、DOK7型筋無力症を発症したマウスへの投与によりその運動機能を改善し、生存期間を延長しました。さらに、筋ジストロフィーの一種を発症しているマウスにおいても類似の効果を実証しました。
本研究の成果として、DOK7発現ベクターの投与による「神経筋接合部の形成増強治療」をマウスにおいて創出しました。この治療法を簡潔に表現すれば、「小さくなってしまった神経筋接合部を大きくする治療法」と言えます(図)。本成果は、神経筋接合部の形成不全を伴う多様な神経筋疾患に対する治療法の開発につながることが期待されます。
本研究は、文部科学省科学研究費補助金や橋渡し研究加速ネットワークプログラムなどの助成を受けて実施されました。