東京大学医科学研究所

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発表論文解説

肺がんの発症に関連する新たな遺伝子を発見-肺がん発症に2つのがん関連遺伝子が関係することを解明-

Nat Genet. 2010 Oct;42(10):893-6
 
Daiki Miki1,2, Michiaki Kubo3, Atsushi Takahashi4, Kyong-Ah Yoon5, Jeongseon Kim5, Geon-Kook Lee5, Jae Ill Zo5, Jin Soo Lee5, Naoya Hosono3, Takashi Morizono6, Tatsuhiko Tsunoda6, Naoyuki Kamatani4, Kazuaki Chayama2, Takashi Takahashi7, Johji Inazawa8, Yusuke Nakamura1 & Yataro Daigo1,9,10

独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)と国立大学法人東京大学(濱田純一総長)は、文部科学省が推進するオーダーメイド医療実現化プロジェクト(中村祐輔プロジェクトリーダー)で実施した遺伝子の解析結果から、日本人と韓国人の肺腺がんの発症と関連がある2つの遺伝子の一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)を発見しました。これは、理研ゲノム医科学研究センター(鎌谷直之センター長)多型解析技術開発チームの久保充明チームリーダー、東京大学医科学研究所の中村祐輔教授、滋賀医科大学医学部腫瘍内科の醍醐弥太郎教授(前東京大学医科学研究所准教授)、韓国国立がんセンターとの共同研究による成果です。

肺がんは世界的に、がんの死亡の原因として最も頻度が高く、その発生率は東アジアおよび欧米諸国で増加しています。これまではゲノムワイド解析による肺がんの遺伝素因の研究は、主に欧米人で行われてきましたが、日本や東アジア地域での体系的な研究結果はこれまで報告されていませんでした。

今回、研究グループは、日本人と韓国人の肺腺がん患者2,098人と一般集団11,048人のサンプルを用いて高速大量タイピングシステムによりゲノムワイド解析を行い、肺腺がんの発症に関わる2つの遺伝子座位としてTERT遺伝子およびTP63遺伝子を発見しました。TERT遺伝子のリスク多型を持つ人では、1.27倍、TP63遺伝子のリスク多型を持つ人では、1.31倍、肺腺がんのリスクが高くなっており、さらに、2つのリスク多型を同時に持つ場合の肺腺がんのリスクは4.26倍であることが分かりました。

これらの結果は、TP63とTERTの遺伝子多型が肺腺がんの発症に強く関与することを示唆しており、肺がんの発症機構の解明につながるとともに、今後、肺腺がんの治療法や発症リスク診断法の開発に貢献するものと期待されます。

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