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発表論文解説

多能性幹細胞を用いてマウスの体内でラットの膵臓を作成することに成功

Cell. 2010 Sep 3;142(5):787-99
小林 俊寛1, 2, 山口 智之1, 2, 濱仲 早苗1, 2, 加藤-伊藤 めぐみ2, 3, 山崎 裕治1, 2, 井端 淳2, 佐藤 秀征1, 2, 李 允秀1, 2, 臼井 丈一1, 5, キンスリーA.S.6, 平林 真澄3, 4, 中内 啓光1, 2
1. 東京大学医科学研究所 幹細胞治療センター 幹細胞治療研究分野、2. 科学技術振興機構ERATO 中内幹細胞制御プロジェクト、3. 自然科学研究機構 生理学研究所 行動・代謝分子解析センター 遺伝子改変動物作製室、4. 総合研究大学院大学 生命科学研究科 生理科学専攻、5. 現所属:筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科学、6. ロンドン大学 キングスカレッジ病院 肝研究所
Toshihiro Kobayashi,1,2 Tomoyuki Yamaguchi,1,2 Sanae Hamanaka,1,2 Megumi Kato-Itoh,2,3 Yuji Yamazaki,1,2 Makoto Ibata,2 Hideyuki Sato,1,2 Youn-Su Lee,1,2 Jo-ichi Usui,1,6 A.S. Knisely,5 Masumi Hirabayashi,3,4 and Hiromitsu Nakauchi1,2,*

現在、臓器不全症の治療には臓器移植や人工臓器が主に用いられていますが、ドナー不足や生体適合性の問題など解決すべき点も多く、移植可能な臓器を患者自身の細胞から作ることは再生医療の重要な目標の1つとなっています。しかし、臓器のような三次元的な構造を生体外で再現することは極めて困難です。

本研究では、「胚盤胞補完法(はいばんほうほかんほう)」という技術を用いて、マウスの体内にラットの膵臓を作成することに成功しました。具体的には、膵臓ができないように遺伝子操作したマウスの受精卵が胚盤胞(受精3~4日後)に達した段階で、正常なラット由来の多能性幹細胞を内部に注入し、仮親の子宮へ移植しました。その結果、生まれてきたマウスの膵臓は全てラットの多能性幹細胞由来の膵臓に置き換わっていました。また、このマウスは成体にも発育し、インスリンを分泌するなど臓器としても正常に機能しました。

マウスとラットという種を超えた胚盤胞補完法に成功したことから、本研究成果を応用すれば、ヒトの臓器がどのように形成されるのか、そのメカニズムを異種動物の体内で解析することが可能になります。さらに大型動物の体内でヒト臓器を再生するといった、全く新しい再生医療技術の開発に大きく貢献するものと期待されます。

なお本研究成果は科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業ERATO型研究プロジェクト:「中内幹細胞制御プロジェクト」との共同研究によって得られました。

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