東京大学医科学研究所

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発表論文解説

ほ乳類とレトロウイルスの進化的軍拡競争の網羅的描出

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 12月17日オンライン版 DOI番号:10.1073/pnas.1914183116
伊東 潤平, Robert J. Gifford, 佐藤 佳*
Retroviruses drive the rapid evolution of mammalian APOBEC3 genes

東京大学医科学研究所 感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤准教授らは、ヒトを含む160種のほ乳類のゲノム配列のメタ解析により、ウイルス感染を防御する遺伝子APOBEC3の進化原理を明らかにしました。
内在性レトロウイルス(endogenous retrovirus; ERV)は、宿主のゲノム中に残るウイルス感染・侵略の痕跡です。ヒトを含む哺乳類において、ERVはゲノムの大きな割合を占めているため、哺乳類の祖先は大量のレトロウイルス感染にさらされてきたと考えられています。このようなレトロウイルス感染に対抗するため、哺乳類はさまざまなウイルス感染防御機構を進化させてきました。ウイルス感染防御を担う遺伝子のひとつに、APOBEC3ファミリー遺伝子があります。興味深いことに、APOBEC3ファミリー遺伝子は、ほ乳類の進化の過程において遺伝子重複によりコピー数を増大させ、多様化したことが示唆されています。このことから、レトロウイルスの複製・増殖を抑制するために、ほ乳類のAPOBEC3ファミリー遺伝子の重複と多様化が引き起こされた可能性が考えられました。この可能性を検証するために、本研究では、大規模バイオインフォマティクス解析により、ゲノムが解読されている160種のほ乳類それぞれの種が保有するAPOBEC3ファミリー遺伝子の数と、ゲノム中に挿入されたERVの数を計数しました。その結果、多くのERVがゲノム中に蓄積しており、過去に大量のレトロウイルス感染を経験したと思われる動物種ほど、多種多様なAPOBEC3ファミリーの遺伝子を持っていることが明らかとなりました。この結果は、APOBEC3ファミリー遺伝子とレトロウイルスが、ほ乳類の進化の過程において、進化的な軍拡競争を繰り広げ、共進化してきたことを強く示唆するものです。
本研究成果は、2019年12月17日米国科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン版で公開されました。
なお、本研究は、東京大学、英国グラスゴー大学が共同で行ったものです。