東京大学医科学研究所

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発表論文解説

患者から分離されたゾフルーザ耐性インフルエンザウイルスの特性を解明

Nature Microbiology 11月25日オンライン版 DOI番号:10.1038/s41564-019-0609-0
今井 正樹1、山下 誠1、坂井(田川) 優子1、岩附(堀本) 研子1、木曽 真紀1、村上 樹里佳1、安原 敦洋1、 高田 光輔1、伊藤 睦美1、中島 典子2、高橋 健太2、Tiago J. S. Lopes1,3、Jayeeta Dutta4、Zenab Khan4、Divya Kriti4、Harm van Bakel4、時田 章史5、萩原 温久5、泉田 直己5、黒木 春郎6, 西野 多聞5、和田 紀之5、古賀 道子7、 安達 英輔8、十菱大介1、長谷川 秀樹2、河岡義裕1,3
1.東京大学医科学研究所・ウイルス感染分野、2国立感染症研究所、3.米国ウィスコンシン大学、4.米国マウントサイナイ医科大学、5東京小児科医会公衆衛生委員会、6外房こどもクリニック、7東京大学医科学研究所・感染症分野、8東京大学医科学研究所付属病院
Influenza A virus variants with reduced susceptibility to baloxavir isolated from Japanese patients are fit and transmit through respiratory droplets

東京大学医科学研究所ウイルス感染分野の河岡教授らは、インフルエンザ患者からバロキサビル・マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)に対して耐性を示すウイルスを分離し、その基礎性状を明らかにしました。
本研究グループは、2018/2019インフルエンザ流行シーズンに国内の医療機関を受診したA型インフルエンザ患者から採取した検体を入手し、検体中のウイルス遺伝子を解析しました。その結果、ゾフルーザを服用した12歳未満のA型インフルエンザ患者において、ゾフルーザ耐性ウイルスが高い頻度で出現することを明らかにしました。さらに薬剤未投与のA型インフルエンザ小児患者からも耐性ウイルスを検出しました。これは耐性ウイルスが感染者から周囲の人々に感染伝播した可能性が高いことを示しています。
また、本研究グループは患者から分離した耐性ウイルスの性状をインフルエンザのモデル動物を用いて分析し、ゾフルーザ感受性ウイルスと比較しました。その結果、ゾフルーザ耐性ウイルスの哺乳類における増殖性と病原性は感受性ウイルスと同等であることが明らかになりました。さらに、これらの耐性ウイルスは哺乳類間を効率よく空気伝播することもわかりました。これらの成績はゾフルーザ耐性ウイルスが今後人から人へ広がる可能性があることを示唆しています。
本研究成果は、医療現場における適切な抗インフルエンザ薬の選択に役立つだけでなく、耐性ウイルスのリスク評価など行政機関が今後のインフルエンザ対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となります。
本研究成果は、2019年11月25日英国科学雑誌「Nature Microbiology」のオンライン速報版で公開されました。
なお本研究は、東京大学、国立感染症研究所、米国ウィスコンシン大学、米国マウントサイナイ医科大学が共同で行ったものです。