東京大学医科学研究所

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発表論文解説

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて~

Nature Communications volume 10, Article number: 3999 (2019)
Shingo Komura, Kenji Ito, Sho Ohta, Tomoyo Ukai, Mio Kabata, Fumiaki Itakura, Katsunori Semi, Yutaka Matsuda, Kyoichi Hashimoto, Hirofumi Shibata, Masamitsu Sone, Norihide Jo, Kazuya Sekiguchi, Takatoshi Ohno, Haruhiko Akiyama, Katsuji Shimizu, Knut Woltjen, Manabu Ozawa, Junya Toguchida, Takuya Yamamoto, Yasuhiro Yamada*
Cell-type dependent enhancer binding of the EWS/ATF1 fusion gene in clear cell sarcomas

岐阜大学医学部整形外科(研究当時:京都大学iPS細胞研究所)の河村真吾 助教、東京大学医科学研究所の伊藤謙治 特任研究員、山田泰広 教授らの研究グループは、明細胞肉腫(Clear Cell Sarcoma : CCS)のマウスモデルに形成された腫瘍の細胞株からiPS細胞を樹立し、このiPS細胞をマウスの胚盤胞に移植することで、CCSと同じ遺伝子変異を持つキメラマウスを作製しました。これまで、発がんには遺伝子変異が重要であることがわかっていましたが、遺伝子変異以外の他の要因の重要性は十分にわかっていませんでした。本研究では、作製したキメラマウスの組織を詳細に調べることで、遺伝子変異が存在しても多くの組織では腫瘍は形成されないことを示しました。また、このキメラマウスでの腫瘍抑制には細胞老化が関与していることを明らかにしました。さらに、この分子基盤を明らかにすることで、がん細胞に細胞老化を誘導し、がん細胞の増殖を抑制できることを示しました。本研究成果は、発がんには遺伝子変異だけでなく、細胞・組織ごとに異なるエピゲノムも重要であることを個体レベルで明らかにするとともに、がん細胞のエピゲノムを標的として人為的に細胞老化を誘導することで発がんを抑制するという、新たながん治療法開発の可能性を提示しました。