東京大学医科学研究所

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発表論文解説

腸内細菌が起こす病気の革新的な制御法を開発〜抗原特異的な粘膜免疫応答をあらゆる臓器で誘導できる新規ワクチン接種法を用いた革新的予防・治療法〜

Gastroenterology DOI: https://doi.org/10.1053/j.gastro.2019.08.021
Kosuke Fujimoto, Yunosuke Kawaguchi, Masaki Shimohigoshi, Yoshiyuki Gotoh, Yoshiko Nakano, Yuki Usui, Tetsuya Hayashi, Yasumasa Kimura, Miho Uematsu, Takuya Yamamoto, Yukihiro Akeda, Joon Haeng Rhee, Yoshikazu Yuki, Ken J Ishii, Sheila E. Crowe, Peter B. Ernst, Hiroshi Kiyono, and Satoshi Uematsu
Antigen-specific Mucosal Immunity Regulates Development of Intestinal Bacteria-mediated Diseases

大阪市立大学大学院医学研究科ゲノム免疫学の植松智教授、藤本康介助教(東京大学医科学研究所国際粘膜ワクチン開発研究センター自然免疫制御分野を兼任)らの研究グループは、全身の粘膜において致死的な感染症だけでなく、疾患特異的な腸内細菌の制御へ応用できる新規粘膜ワクチンの手法を開発しました(特許PCT/JP2016/67403)。
 近年では、腸内微生物ゲノム解析研究が進み、さまざまな疾患と腸内細菌叢の乱れとの関連性や、疾患の発症に直接的に関わる病原常在腸内細菌が次々と発見されており、さまざまな粘膜ワクチンが開発されています。しかしながら、ワクチン接種により全身の粘膜で抗原特異的な免疫応答を自在に誘導できる方法はなく、疾患制御のために消化や恒常性の維持に関わる有益菌を殺さずに病原常在腸内細菌だけを特異的に排除することができませんでした。
 植松教授らの研究グループが開発したワクチンは、接種後に感染防御が必要な粘膜面へ抗原を加えるだけで、非常に高濃度の抗原特異免疫グロブリンA(IgA)を誘導でき、それによりコレラ毒素による下痢の抑制、肺炎の最大の原因菌である肺炎球菌感染の制御、ならびにヒトの肥満や糖尿病の原因となる腸内常在細菌の制御が可能になることが明らかとなりました。
 本研究成果は2019年8月21日に国際科学雑誌『Gastroenterology』にオンライン掲載されました。