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発表論文解説

腸内細菌叢がインフルエンザワクチンの効果を高めるメカニズムを解明 ~地球温暖化や食糧危機がワクチン効果に与える悪影響とは~

Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America(PNAS)(米国東部時間2月4日午後3時オンライン掲載)
森山 美優1、一戸 猛志1
1.東京大学医科学研究所 感染症国際研究センター ウイルス学分野
High ambient temperature dampens adaptive immune responses to influenza A virus infection

東京大学医科学研究所感染症国際研究センターウイルス学分野の一戸猛志准教授らは、外気温や摂食量、腸内細菌由来代謝産物などがウイルス感染後の免疫応答やワクチン効果に影響を及ぼすことを見出しました。
 地球温暖化は、さまざまな感染症を媒介する生物(ジカウイルスを媒介する蚊や重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSウイルス)を媒介するマダニ等)の生息域を拡大させますが、外気温がウイルス感染後に誘導される免疫応答に与える影響については不明でした。また腸内細菌叢がインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘導に役立つ理由も未解明のままでした。今回、地球温暖化を想定した36℃という暑い環境で飼育したマウスは、22℃で飼育したマウスと比較して、インフルエンザウイルス、ジカウイルス、SFTSウイルスの感染後に誘導される免疫応答が低下することを見出しました。暑い環境で飼育したマウスは摂食量が低下しており、この摂食量の低下が免疫応答の低下につながる要因のひとつでした。そこで、宿主の栄養状態がインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘導に重要な役割を果たしているという仮説を立てて検証したところ、36℃で飼育したマウスに腸内細菌由来代謝産物(酪酸、プロピオン酸、酢酸)やグルコースを投与すると、低下していたウイルス特異的な免疫応答が部分的に回復することを見出しました。
 以上の成果は、外気温がウイルス特異的な免疫応答の誘導に影響を与えることを示した世界で初めての例であり、腸内細菌叢がインフルエンザウイルス特異的な免疫応答に役立つ理由を解明した極めて重要な知見です。また地球温暖化や食糧危機、過度なダイエットが米国で認可されている弱毒生インフルエンザワクチンや、我が国で臨床試験段階にある経鼻投与型インフルエンザワクチンの効果を低下させる可能性を示唆するものであり、これらのことを正しく理解し、対策を講じるにはさらなる研究が必要です。
本研究成果は、2019年2月5日午前5時(米国東部時間 2月4日午後3時)の米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America(PNAS)のオンライン速報版で公開されました。なお本研究成果は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金事業、日本医療研究開発機構(AMED)振興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業、JSPS特別研究員事業などの一環として得られました。