東京大学医科学研究所

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発表論文解説

加齢に伴う正常組織の遺伝子異常とがん化のメカニズムの解明 ―食道上皮は加齢に伴いがん遺伝子の変異を獲得した細胞で再構築される―

Nature DOI:https://doi.org/10.1038/s41586-018-0811-x
Akira Yokoyama*1,2, Nobuyuki Kakiuchi*1,3, Tetsuichi Yoshizato*1, Yasuhito Nannya1, Hiromichi Suzuki1, Yasuhide Takeuchi1,4, Yusuke Shiozawa1, Yusuke Sato1, Kosuke Aoki1, Soo Ki Kim1, Yoichi Fujii1, Kenichi Yoshida1, Keisuke Kataoka1, Masahiro M. Nakagawa1, Yoshikage Inoue1,8, Tomonori Hirano1,3, Yuichi Shiraishi5, Kenichi Chiba5, Hiroko Tanaka6, Masashi Sanada7, Yoshitaka Nishikawa2, Yusuke Amanuma2, Shinya Ohashi2, Ikuo Aoyama2, Takahiro Horimatsu2, Shin’ichi Miyamoto3, Shigeru Tsunoda8, Yoshiharu Sakai8, Maiko Narahara9, J.B. Brown10, Yoshitaka Sato11, Genta Sawada12, Koshi Mimori12, Sachiko Minamiguchi4, Hironori Haga4, Hiroshi Seno3, Satoru Miyano5,6, Hideki Makishima1, Manabu Muto2†, and Seishi Ogawa1,13
1Department of Pathology and Tumor Biology, Kyoto University, Kyoto, Japan, 2Department of Clinical Oncology, Kyoto University Hospital, Kyoto, Japan, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Kyoto University, Kyoto, Japan, 4Department of Diagnostic Pathology, Kyoto University, Kyoto, Japan, 5Laboratory of DNA information Analysis, Human Genome Center, Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo, Japan, 6Laboratory of Sequence Analysis, Human Genome Center, Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo, Japan, 7Department of Advanced Diagnosis, Clinical Research Center, Nagoya Medical Center, Nagoya, Japan, 8Department of Surgery, Graduate School of Medicine, Kyoto University, Kyoto, Japan, 9Department of Human Genetics, McGill University, Montreal, Canada, 10Laboratory of Molecular Biosciences, Life Science Informatics Research Unit, Kyoto University, Kyoto, Japan, 11Sato Clinic, Okayama, Japan, 12Department of Surgery, Kyushu University Beppu Hospital, Beppu, Japan, 13Department of Medicine, Center for Hematology and Regenerative Medicine, Karolinska Institute, Stockholm, Sweden
Age-related remodelling of oesophageal epithelia by mutated cancer drivers

がんは多くの先進諸国で死因の第一位を占める深刻な病気ですが、その70%は65歳以上の高齢者に発症します。しかし、「がんがなぜ高齢者に好発するのか」については未だ十分解明が進んでいません。また、喫煙や飲酒といった生活習慣ががんの発症に関係することはよく知られていますが、これらの因子が加齢と関連してどのようにがんの発症に関わるかについても、未だ十分な解明が進んでいません。
今回、京都大学大学院医学研究科・腫瘍生物学講座 小川誠司 教授、横山顕礼 同特定助教、垣内伸之 同研究員、吉里哲一 同助教、同腫瘍薬物治療学講座 武藤学 教授および東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター 宮野悟 教授らを中心とする研究チームは、食道がんが高度の飲酒歴と喫煙歴を有する人に好発することに着目し、"一見正常"な食道に生じている遺伝子変異を、最新の遺伝子解析技術で詳細に解析することにより、がんが高齢者で発症するメカニズムの一端を解明することに成功しました。
解析の結果、驚くべきことに、我々の食道上皮は、加齢にともなって、食道がんで頻繁に認められる遺伝子の変異を獲得した細胞が徐々に増えていき、70歳を超える高齢者では全食道面積の40〜80%がこうしたがん遺伝子の変異をもった細胞で置き換わることがわかりました。こうした食道上皮の異常な細胞による「再構築」は、すでに乳児の時期から始まっており、全ての健常人で例外なく認められましたが、高度の飲酒と喫煙歴のある人では、この過程が強く促進され、しかも、がんで最も高頻度に異常が認められるTP53遺伝子や染色体に異常を有する細胞の割合が顕著に増加することが明らかになりました。これらの結果は、なぜがんが高齢者に好発するのか、また、それがどのようにして飲酒や喫煙といったリスクによって促進されるのかについて、重要な手がかりを与える知見です。
本研究成果は、2019年1月2日に国際科学誌「Nature」にオンライン掲載されました。