東京大学医科学研究所

  1. ホーム
  2. 最新研究成果■発表論文解説

発表論文解説

エボラウイルス粒子のコア構造を解明

Nature DOI https://doi.org/10.1038/s41586-018-0630-0
杉田征彦 1、松波秀行 1、河岡義裕 2,3、野田岳志 4、Matthias Wolf 1
1沖縄科学技術大学院大学 生体分子電子顕微鏡解析ユニット、2東京大学医科学研究所 ウイルス感染分野、3米国ウィスコンシン大学、4 京都大学ウイルス・再生医科学研究所 微細構造ウイルス学分野
Cryo-EM structure of the Ebola virus nucleoprotein-RNA complex at 3.6Å resolution

Matthias Wolf准教授(沖縄科学技術大学院大学)、河岡義裕教授(東京大学 医科学研究所)、野田岳志教授(京都大学 ウイルス・再生医科学研究所)らの研究グループは、最先端のクライオ電子顕微鏡解析により、エボラウイルス粒子のコア構造を世界で初めて原子レベルで明らかにしました。
 エボラウイルスのゲノムRNAは、多数のウイルス核タンパク質と結合して螺旋状の核タンパク質―ゲノムRNA複合体を形成します。この複合体はエボラウイルス粒子のコア構造であり、ウイルス粒子形成において中心的な役割を担っています。しかし、核タンパク質がどのようにゲノムRNAと結合し複合体構造を形成しているかは不明でした。
 本研究では、精製した組換え核タンパク質―RNA複合体を用いました。最先端のクライオ電子顕微鏡を用いて複合体の画像を多数撮影したのち、単粒子解析法という画像解析手法によって核タンパク質―RNA複合体の立体構造を詳細に明らかにし、その原子モデルを構築しました。
 本研究によって明らかにされた複合体構造から、RNAとの結合を担う核タンパク質のアミノ酸が同定されました。また、螺旋複合体形成に重要な相互作用の分子機構が明らかになりました。さらに、本研究から計算されたゲノム全長あたりの複合体の長さが過去に報告されたエボラウイルスの長さと一致したことから、この複合体がウイルス全体の長さを決める物差しのような機能を持つことが強く示唆されました。本成果は、ウイルス粒子形成を阻害する化合物の設計などの創薬に繋がることが期待できます。
 本研究成果は、2018年10月17日に英国科学雑誌「Nature」で公開されました。なお本研究は、沖縄科学技術大学院大学、京都大学、東京大学、米国ウィスコンシン大学が共同で行ったものです。本研究成果は、日本学術振興会科学研究費補助金事業、日本医療研究開発機構(AMED)新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業、AMED革新的先端研究開発支援事業などの一環として得られました。

参考図:本研究で明らかになった核タンパク質−RNA複合体の構造
(左図)クライオ電子顕微鏡によって明らかになった複合体の立体構造。本来、電子顕微鏡構造は無色だが、説明のために核タンパク質を灰色(そのうち1分子を青色で強調)、RNA鎖を赤色に着色している。RNAは複合体の外側に巻き付くように配置されていることが判った。(右図)電子顕微鏡構造(ポリゴンで表示)に基づいて作製した核タンパク質とRNAの原子モデル。核タンパク質(青)には溝状の構造があり、核タンパク質1分子あたりヌクレオチド6個分のRNA鎖(赤)が溝に挟まれるように結合していることが明らかになった。