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発表論文解説

ヘルペスウイルスの核外輸送機構を解明 -ウイルス研究が紐解く高分子複合体のユニークな核外輸送機構-

Nature Communications DOI番号:10.1038/s41467-018-05889-9
有井潤1, 2、渡辺瑞季1, 2、前田史雄1, 2、西住(渡海)紀子3、千原崇裕4、三浦正幸4、丸鶴雄平1, 2、小栁直人1, 2、加藤哲久1, 2、川口寧1, 2
1東京大学医科学研究所・感染免疫部門・ウイルス病態制御分野、2東京大学医科学研究所・感染症国際研究センター・感染制御系、3東京大学医科学研究所・顕微鏡コアラボラトリー、4東京大学・大学院薬学系研究科遺伝学教室
ESCRT-III mediates budding across the inner nuclear membrane and regulates its integrity

ヒトに多彩な病態を引き起こす単純ヘルペスウイルス(HSV)は、宿主細胞の核内において、ウイルスゲノムを内包したカプシドを形成します。核内のカプシドは、HSV粒子の最終形成の場である細胞質へと輸送される必要があります。その際、核膜孔非依存的な小胞媒介性核外輸送という生物学上極めてユニークな核外輸送機構でカプシドは核外に輸送されます。しかし、小胞媒介性核外輸送の分子機構はほとんど不明でした。東京大学医科学研究所の川口寧教授、有井潤助教らの研究グループは、HSVカプシドの核外輸送には、本来細胞質で機能する宿主のESCRT-IIIシステムが利用されていることを明らかにしました。さらに非感染細胞における巨大リボ核蛋白質(RNP)複合体の核外輸送や、核内膜の恒常性維持にも同様のシステムが貢献していることを発見しました。つまりHSVは、細胞に本来備わっている核外輸送機構を活性化(ハイジャック)することでカプシドの核外輸送を達成していると考えられます。本研究は、ウイルス研究から、細胞に本来備わっているユニークな核外輸送の分子機構とその意義を明らかにしただけでなく、HSV感染症や核内膜の恒常性破綻に起因する遺伝性疾患の新しい治療法の開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2018年8月23日午後6時(英国時間 8月23日午前10時)、英国科学雑誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。なお、本研究成果は、文部科学省新学術領域研究、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金事業、文部科学省共同利用・共同研究拠点事業などの一環として得られました。