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発表論文解説

大腸がんの腫瘍内多様性の獲得原理を説明する新たな進化モデルを構築 ~腫瘍内多様性を伴う難治がんを克服する次世代のがん治療法開発に期待~

Nature Communications 2018, 9:2884
齋藤 衆子1, 2、新井田 厚司3、内 龍太郎1、平田 秀成1、小松 久晃1、﨑村 正太郎1、林 周斗4、南原 翔1、黒田 陽介1、伊藤 修平1、江口 英利1、増田 隆明1、杉町 圭史1、東保 太郎5、西田 陽登6、駄阿 勉6、千葉 健一4、白石 友一4、吉里 哲一7、兒玉 雅明2、沖本 忠義2、水上 一弘2、小川 竜2、岡本 和久2、首藤 充孝2、福田 健介2、松井 佑介8、島村 徹平8、長谷川 嵩矩9、土岐 祐一郎10、長山 聡11、山田 一隆12、加藤 護13、柴田 龍弘14, 15、森 正樹10、油谷 浩之16、村上 和成2、鈴木 穣17、小川 誠司7、宮野 悟3, 4、三森 功士1
1. 九州大学病院別府病院・外科、2. 大分大学医学部・消化器内科学講座、3. 東京大学医科学研究所ヘルスインテリジェンスセンター・健康医療計算科学分野、4. 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センターDNA情報解析分野、5. 九州大学病院別府病院・検査部、6. 大分大学医学部・診断病理学講座、7. 京都大学大学院・医学研究科腫瘍生物学講座、8. 名古屋大学大学院医学系研究科・システム生物学分野、9. 東京大学医科学研究所ヘルスインテリジェンスセンター・健康医療データサイエンス分野、10. 大阪大学大学院医学研究科・ 消化器外科学、11. 公益財団法人がん研究会有明病院・大腸外科、12. 高野病院、13. 国立研究開発法人国立がん研究センター・バイオインフォマティクス部門、14. 国立研究開発法人国立がん研究センター・がんゲノミクス研究分野、15. 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター・ゲノム医科学分野、16. 東京大学先端科学技術研究センター・ゲノムサイエンス部門、17. 東京大学大学院新領域創成科学研究所・メディカル情報生命専攻生命システム観測分野
A temporal shift of the evolutionary principle shaping intratumor heterogeneity in colorectal cancer

一人のがん患者の腫瘍の中には異なる遺伝子変異をもつ複数の細胞集団が存在することが知られています。この現象は腫瘍内多様性と呼ばれ、がんの難治性の一因と考えられています。しかし腫瘍内多様性の獲得原理の詳細については解明されていませんでした。九州大学の三森功士教授の研究グループは、東京大学の宮野悟教授、新井田厚司助教、大分大学の村上和成教授、齋藤衆子医員らと共に、大腸がんの腫瘍内多様性の獲得原理を説明する新たな進化モデルを構築しました。
本研究では、以前の先行研究 (Uchi R.,et al. PLoS Genet. 2016) で取得した進行大腸がんデータに加えて、早期大腸がん患者10 人から得た各腫瘍の複数箇所から次世代シーケンサーを用いて包括的遺伝子変異データを取得し、両データを合わせてスーパーコンピュータを用いた数理統計解析を行いました。その結果、早期がんではがん細胞の増殖、生存に有利に働く複数のドライバー変異(がんの発生・進展において直接的に重要な役割を果たす遺伝子変異)が一腫瘍内に散在し、自然選択を受ける「ダーウィン進化」から、進行がんにおいてはがん細胞の増殖、生存には影響を与えない無数の中立変異(正や負の自然選択に関わらず自然に起こる突然変異)が蓄積する「中立進化」によって、腫瘍内多様性が創出されており、進化のパターンは変化していることが明らかになりました。また早期がんに比べて進行がんでは有意に染色体コピー数異常が多いことも明らかとなり、染色体コピー数異常がこの「進化シフト」の引き金となっている可能性を見出しました。
本研究の成果は腫瘍内多様性を伴う難治がんを克服する次世代のがん治療法開発の基礎になるものと期待されます。
本研究の成果はNat Commun に平成30 年7 月23 日(月)(日本時間)に掲載されました。