東京大学医科学研究所

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発表論文解説

インフルエンザウイルスに感染した動物の体内を生きたまま観測 -ウイルスに対する宿主応答メカニズムの解明に新たな視点-

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (6月25日オンライン版)
植木 紘史1、I-Hsuan Wang1、福山 聡1、桂 廣亮1、Tiago Jose da Silva Lopes1, 2、Gabriele Neumann2、河岡 義裕1,2,3
1. 東京大学医科学研究所・ウイルス感染分野、2. Wisconsin大学Madison校・Pathobiological Sciences学部、3. 東京大学医科学研究所・感染症国際研究センター・高病原性感染症系
In vivo imaging of the pathophysiological changes and neutrophil dynamics in influenza virus-infected mouse lungs

この度、東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループは、インフルエンザウイルスに感染したマウスの肺を、生体イメージング法を用いて生きたまま観察することに成功しました。
インフルエンザは、時として致死性の肺組織障害を引き起こすため、医学・獣医学・公衆衛生上の対策が必須な呼吸器感染症です。インフルエンザウイルスに感染した肺では、免疫系の活性化をはじめ様々な宿主応答が誘導されると考えられていますが、従来の固定標本などを用いた解析では、細胞の動きや血液の流れなどの時間軸を持った情報を得ることはできませんでした。
本研究では、2光子励起顕微鏡を用いた生体イメージングシステムを構築することで、インフルエンザウイルスに感染したマウスの肺における免疫細胞の動きや血液の流れをタイムラプス像として撮影することに成功し、血流速度、血管透過性の変化、免疫細胞の移動速度などの観測、および、新たな病態生理学的なパラメーターとしての定量化解析を行うことができました。さらに、このイメージングシステムをバイオセーフティーレベル3 (BSL3) の施設に設置することで、季節性ヒトインフルエンザウイルス(H1N1)のみならず高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に感染した動物の観察が可能となり、病原性の異なるウイルス株を比較解析することができました。
本研究で確立したインフルエンザウイルス感染肺の生体イメージングシステムは、他の肺疾患の解析にも応用が可能であり、様々な呼吸器疾患の病態解明にも役立つことが期待されます。
本研究成果は、2018年6月25日(米国東部夏時間 午後3時)、米国科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン速報版で公開されます。なお本研究は、東京大学と米国ウィスコンシン大学が共同で行ったものです。本研究成果は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業、日本医療研究開発機構(AMED)(平成27年度以降)革新的先端研究開発支援事業 (LEAP)、感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)などの一環として得られました。