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ニボルマブの治療歴がある非小細胞肺癌(NSCLC)患者では、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬投与後に間質性肺疾患の発症が高まる懸念がある

ニボルマブの治療歴がある非小細胞肺癌(NSCLC)患者では、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬投与後に間質性肺疾患の発症が高まる懸念がある

JAMA Oncology (1月11日オンライン版)
大島康雄1、谷本哲也2、湯地晃一郎3、東條有伸1
1.東京大学医科学研究所・分子療法分野、2.常磐病院・内科、3.東京大学医科学研究所・国際先端医療社会連携研究部門
EGFR-TKI-associated interstitial pneumonitis in nivolumab-treated patients with non-small cell lung cancer

東京大学医科学研究所分子療法分野の大島康雄客員研究員らは、FDAが提供するFAERSという副作用データベースを解析することにより、NSCLC患者にEGFR阻害薬を投与した場合の副作用として間質性肺疾患が報告される割合が、ニボルマブの治療歴がある患者で有意に高いことを報告した。これまでにも、この両薬剤を組み合わせると間質性肺疾患を発症しやすいとする報告はあったものの、症例報告やケースシリーズといった、対照との比較のない観察に基づくものであった。それに対して本研究では、ニボルマブを使用しない対象群との比較にもとづく定量的なデータを示した点に新規性がある。FAERSは、症例報告等と異なり、比較対象を置いた研究を実施することが可能である利点がある。また、より厳密な比較試験を実施すると結果を得るまでに数年かかることも少なくないが、FAERSを用いると迅速に結果を得ることができる利点もある。本研究では着想から結果の公表まで半年足らずと迅速であった。臨床現場で使用されている医薬品の場合、リスクが高まる可能性が明らかとなった際には、速やかに臨床現場に情報を還元する必要があることから、迅速に結果を得られることは重要である。さらに、副作用の発現を主要な評価項目として計画された臨床研究は倫理的観点から実施困難であり、FAERSのように既に存在しているデータを用いた解析を行うことは、そのような観点からも一定の意義がある。一方、副作用自発報告データベースであるFAERSデータには、さまざまな偏りが入る懸念があるため、結果の解釈には注意が必要である。

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