東京大学医科学研究所

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発表論文解説

マイクロRNAによる脊髄小脳失調症の遺伝子治療-有害なタンパク質の翻訳のみを抑制-

Science Translational Medicine doi:10.1126
Yu Miyazaki, Xiaofei Du, Shin-ichi Muramatsu, Christopher M. Gomez
An miRNA-mediated therapy for SCA6 blocks IRES-driven translation of the CACNA1A second cistron

脊髄小脳失調症(SCA)は、小脳の神経細胞が徐々に脱落し運動機能が障害される難病です。現在までに約40の疾患遺伝子と病原性変異が同定されていますが、いずれも根本的な治療法はありません。脊髄小脳変性症6型(SCA6)は、日本では優性遺伝のSCAのうち2番目に多く、神経細胞の活動に必要なカルシウムチャネル(αA1)の遺伝子CACNA1Aの塩基配列の一部が異常に伸長しています。シカゴ大学のグループは、2013年にCACNA1A遺伝子はαA1だけでなく、α1ACTという転写因子のタンパク質もコードしており、伸長した配列を伴うα1ACTこそが神経細胞に障害を起こす原因であることを報告しました。
今回、東京大学医科学研究所 遺伝子・細胞治療センターの村松慎一特任教授は、シカゴ大学神経内科学の宮崎雄医師、Christopher M. Gomez教授らと共同で、α1ACTを標的とした新規の遺伝子治療法を開発しました。研究グループは、miR-3191-5pというmicroRNA(miRNA)がCACNA1A遺伝子のメッセンジャーRNAからα1ACT タンパク質への翻訳を選択的に抑制することを見出しました。最初に、神経細胞に効率よく遺伝子を運ぶことのできる改良型アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用して、伸長した配列を伴うα1ACTをマウスの脳で発現させることにより運動失調を示すSCA6モデルマウスを作製しました。次に、このマウスにmiR-3191-5pを導入すると神経細胞の脱落が抑制され運動機能が改善することを示しました。
本研究は、miRNAにより病因タンパク質の産生を選択的に抑制するという新しい遺伝子治療の方法を開発したものです。