東京大学医科学研究所

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発表論文解説

M細胞標的型粘膜ワクチンは効果的に抗原特異的免疫応答を誘導する

J Exp Med 204; 2789-2796, 2007
野地智法1,2)、幸義和1,2)、松村亜紀子1,2)、目島未央1,2)、寺原和孝1,2)、Dong-Young Kim1,2)、福山聡1,2)、岩附(堀本)研子2,3)、河岡義裕2,3)、幸田知子4)、小崎俊司4)、五十嵐脩1,2)、清野宏1,2)
1: 東京大学医科学研究所感染免疫部門炎症免疫学分野
2: 東京大学医科学研究所感染免疫部門ウイルス感染分野
3: CREST・科学技術振興機構
4: 大阪府立大学大学院生命環境科学研究科獣医学専攻獣医感染症学教室
A novel M cell-specific carbohydrate-targeted mucosal vaccine effectively induces antigen-specific immune responses. Tomonori Nochi、Yoshikazu Yuki、Akiko Matsumura、Mio Mejima、Kazutaka Terahara、Dong-Young Kim、Satoshi Fukuyama、Kiyoko Iwatsuki-Horimoto、Yoshihiro Kawaoka、Tomoko Kohda、Shunji Kozaki、Osamu Igarashi、Hiroshi Kiyono J Exp Med 204; 2789-2796, 2007

粘膜面から侵入する病原性細菌・ウイルス等の外来抗原は、パイエル板や鼻咽頭関連リンパ組織を覆う特殊に分化した上皮層(Follicle-associated epithelium; FAE)に散在するM細胞より取り込まれることで、宿主は抗原特異的免疫応答を全身系のみならず粘膜系に誘導する。 07112801.png全身免疫システムを応用したこれまでの注射型ワクチンでは、粘膜面での抗原特異的免疫を効果的に誘導できないことから、昨今問題となっている粘膜から侵入する病原微生物が引き起こす新興・再興感染症の予防法として、この粘膜免疫システムを応用した粘膜ワクチンの開発に向けた期待は非常に大きい。一方で、日本で今日実用化され接種されている粘膜ワクチンはポリオワクチンのみであり、その実用化に向けた課題が多いのも現状である。本研究では、その課題の一つである粘膜ワクチンのM細胞への抗原送達性の向上を目的とした研究を実施した。
07112802.png我々が本研究で作製したM細胞特異的モノクローナル抗体(NKM 16-2-4)は、上述したパイエル板や鼻咽頭関連リンパ組織に散在するM細胞に加え、最近我々が発見した絨毛上に存在する抗原取り込み細胞(絨毛M細胞)にも特異性を有すが、周囲の吸収上皮細胞や杯細胞には全く反応しなかった。NKM 16-2-4のエピトープ解析の結果、本抗体はα(1, 2)型フコースを含むM細胞特異的糖鎖構造を認識していることが明らかとなった。また、本抗体はワクチン抗原のデリバリー分子としての応用性を有しており、実際、NKM 16-2-4に結合させた各種感染症に対するワクチン抗原(例;破傷風トキソイドやボツリヌストキソイド)を粘膜アジュバントであるコレラ毒素と共に経口投与することで、効果的な抗原特異的免疫応答を全身系のみならず粘膜系に誘導した。さらには、NKM 16-2-4を用いたM細胞標的型ボツリヌストキソイドの経口ワクチン投与により、致死量の10,000倍の毒素暴露時においても、100%生存可能な防御免疫の誘導が可能であることが実証された。以上の結果から、NKM 16-2-4を用いたM細胞特異的糖鎖構造を標的とした粘膜ワクチンが、粘膜感染症に対する予防ワクチンとして非常に効果的であることが示された。