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発表論文解説

Kidは分裂後期染色体コンパクションを担い、正常な核形成を保証する

Cell 132(4): . 2008
大杉美穂1、足立健次郎2, 4、宝来玲子2, 5、角田茂2、須藤カツ子2, 6、小瀧逸人2、渡海-西住紀子1、相良洋3、岩倉洋一郎2、山本雅1
1. 東京大学医科学研究所癌細胞シグナル分野 2. 東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター 3. 東京大学医科学研究所疾患プロテオミクスラボラトリー 4. 理化学研究所神戸研究所 5. NIH, National Eye Institute 6. 日本医科大学
Kid-Mediated Chromosome Compaction Ensures Proper Nuclear Envelope Formation. Miho Ohsugi, Kenjiro Adachi, Reiko Horai, Shigeru Kakuta, Katsuko Sudo, Hayato Kotaki,Noriko Tokai-Nishizumi, Hiroshi Sagara, Yoichiro Iwakura, and Tadashi Yamamoto. Cell 132(4): . 2008

遺伝情報を正しく分裂後の娘細胞へと受け継ぐためには、正確に分配された1組の染色体すべてが1つの核に収まることが必須である。近年、”後期染色体コンパクション”と呼ばれる染色体占有体積が核膜形成時に最小になる現象が平滑な核膜をもつ正常な娘核形成に重要であることが示唆されていたが、その分子メカニズムは不明であった。我々は染色体結合能をもつキネシンファミリー分子Kid/Kinesin-10が分裂後期から核膜形成後まで隣接する染色体の間隙に局在し、後期染色体コンパクションを担っていることを示した。Kid欠損マウスを作成したところ、Kid欠損による分裂後期/終期染色体コンパクションの欠如は体細胞分裂や減数分裂には大きな影響を与えないが、受精後の雌前核形成と数回の卵割分裂の娘核形成時にのみ高頻度に多核化を引き起こし、約半数が着床前に致死となった。受精後1~2回の卵割分裂時の染色体動態を経時観察したところ、Kid-/-胚では染色体の中期板整列は正常に起こるが、後期染色体コンパクションの欠如の結果、まとまり切れず集団から離れた染色体の周囲に別個の核膜が形成され、微小核や多核を形成する様子が高頻度に見られた。多核化は次の分裂期核膜崩壊と染色体整列によって一度リセットされるが、分配後の核膜形成時に再び高頻度に微小核/多核が形成されるという現象が8細胞期まで続いた。 080307.png一方、体細胞分裂時のKid欠損は凹凸のある核膜形成を引き起こすが、多核や微小核形成には至らず細胞の増殖を阻害しなかった。  受精後10回以上の卵割の間胚性ゲノムからの転写が起こらず、母性因子依存的な速い細胞周期をくり返すカエルやウニとは対照的に、マウスでは胚性ゲノムからの主な転写は2細胞期から開始され、母性因子にのみ依存した卵割期は短い。Kidによる染色体コンパクションは、減数分裂から体細胞分裂期への転換時期でもあるこの母性因子依存的な分裂時の核膜形成に特に重要であり、胚性ゲノムからの転写が開始される時期の核形成を保証していると考えられる。