東京大学医科学研究所

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発表論文解説

赤痢菌のエフェクターIpaBはAPC 抑制因子であるMad2L2を標的として、宿主細胞の細胞周期進行を制御する

Cell 130, 611-623, 2007
祝弘樹、Minsoo Kim、吉川悠子、芦田浩、小川道永、藤田幸裕、Daniel Muller、切替照雄、Peter K.Jackson、小谷秀示、笹川千尋
感染・免疫部門・細菌感染分野
A bacterial effector targets Mad2L2, an APC inhibitor, to modulate host cell cycling. Cell 130, 611-623, 2007. Iwai H, Kim M, Yoshikawa Y, Ashida H, Ogawa M, Fujita Y, Muller D, Kirikae T, Jackson PK, Kotani S, Sasakawa C.

赤痢菌が腸管での感染を維持するために、腸上皮細胞の代謝回転(ターンオーバー)を抑制していることを発見した。腸上皮細胞は、絶えず新生と死を繰り返し、数日以内で入れ替わるターンオーバーを行うことが知られている。多くの病原細菌は腸の上皮細胞を感染の足場として利用しているため、この腸上皮細胞のターンオーバーは、病原体の感染初期に足場となる細胞を除去するシステムとしても重要と考えられていた。  赤痢菌が上皮細胞内へ分泌するIpaBたんぱく質の標的としてAPCユビキチンリガーゼの抑制因子であるMad2L2と結合することを発見した。この結合はMad2L2のAPCユビキチンリガーゼ抑制効果を解除する。07101501.pngAPCユビキチンリガーゼは早期に活性化がおこり、基質分子の分解が誘導され、細胞周期の停止が誘導される。その結果、腸上皮細胞のターンオーバーを抑制していることを明らかにした。これまで、赤痢菌は感染初期に孤立リンパ小節のM細胞から粘膜下へ侵入して周囲の上皮細胞へ感染を拡大することが分かっていた。本研究で、赤痢菌は分裂期の未分化な腸上皮細胞へも感染し、IpaBとMad2L2の結合を通じて菌の増殖に不可欠な上皮細胞の寿命を延長させていることを明らかにした。