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IL-17ファミリー分子の一つであるIL-17Fは、アレルギー応答ではなく、粘膜上皮細菌感染防御において重要な役割を果たしている

IL-17ファミリー分子の一つであるIL-17Fは、アレルギー応答ではなく、粘膜上皮細菌感染防御において重要な役割を果たしている

Immunity 30 (1):108-119, 2009
石亀晴道1、角田茂1、永井武2、角木基彦1、南部あや1、小宮山寛1、藤門範行1、棚橋侑子1、秋津葵1、小瀧逸人1、須藤カツ子1,3、中江進1,4、笹川千尋2、岩倉洋一郎1
1: 東京大学医科学研究所・ヒト疾患モデル研究センター・細胞機能研究分野
2: 東京大学医科学研究所・感染免疫部門・細菌感染分野
3: 東京医科大学・動物実験センター
4: 東京大学医科学研究所・フロンティア研究拠点
Differential roles of interleukin-17A and -17F in host defense against mucoepithelial bacterial infection and allergic responses Harumichi Ishigame, Shigeru Kakuta, Takeshi Nagai, Motohiko Kadoki, Aya Nambu, Yutaka Komiyama, Noriyuki Fujikado, Yuko Tanahashi, Aoi Akitsu, Hayato Kotaki, Katsuko Sudo, Susumu Nakae, Chihiro Sasakawa, & Yoichiro Iwakura Immunity 30 (1):108-119, 2009

CD4+ヘルパーT細胞は免疫応答の中心的な役割を果たしており、これまでに、IFN-を産生する1型ヘルパーT(Th1)細胞とIL-4を産生するTh2細胞とよばれる2つのサブセットがあることが分かっていました。Th1細胞は主に細胞性免疫や細胞内寄生体の排除に関与し、一方、Th2細胞は液性免疫や細胞外寄生体に対する感染防御に関与すると考えられています。ところで、IL-17(IL-17A)は主に活性化T細胞より産生され、線維芽細胞や上皮細胞、血管内皮細胞、マクロファージなど種々の細胞に作用して、様々な炎症性メディエーターの発現を誘導する炎症性サイトカインと言われる分子です。最近、IL-17Aを産生するCD4+T細胞はTh1やTh2細胞とは異なるTh17と呼ばれるサブセットであり、この細胞集団が自己免疫やアレルギー応答、細胞外増殖性細菌感染防御などで中心的な役割を果たしていることが次第と明らかとなり、大いに注目されております。 IL-17Aには相同性を持つ6個のファミリー分子(IL-17A~F)が存在することが報告されています。IL-17FはIL-17ファミリーの中で最もIL-17Aと相同性が高く、IL-17Aとレセプターを共有していることから、この分子も炎症性疾患の発症に重要な役割を果たしているのではないかと考えられてきましたが、これまで生体内におけるIL-17Fの役割は実際にはほとんど解析されておりませんでした。  本研究では、IL-17A欠損マウスの他に、新たにIL-17F欠損、およびIL-17A/F二重欠損マウスを作製することにより、IL-17Fの役割を解析しました.その結果、実験的自己免疫性脳脊髄炎やコラーゲン誘導関節炎、IL-1レセプターアンタゴニスト欠損マウスに自然発症する関節炎などの自己免疫疾患や、遅延型過敏症や接触型過敏症などのアレルギー性炎症応答の発症においては、IL-17Fではなく、IL-17Aが中心的な役割を果たしていることがわかりました。一方、日和見感染菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)やマウス病原性大腸菌であるCitrobacter rodentium の粘膜上皮感染防御においては、IL-17FはIL-17Aと同等か、むしろIL-17Fの方が重要な役割を果たしていることが明らかとなりました。これには、腸管上皮におけるデフェンシンの発現誘導が関与していることが示唆されました.興味深いことに、IL-17Aは主にT細胞から産生されるのに対し、IL-17FはT細胞だけでなく、自然免疫細胞や上皮細胞からも産生されていました。また、マクロファージやT細胞からはIL-17Aのみが効率的に炎症性メディエーターを誘導できるのに対し、上皮細胞の場合は、IL-17AとIL-17Fのどちらもが自然免疫応答を活性化できることが分かりました。  これらの結果は、自然免疫を介した細菌感染防御機構の一端を明らかにしたもので、選択的にIL-17Aを阻害できれば感染防御能を維持したまま炎症反応を抑制できる可能性や、IL-17Fを選択的に発現誘導することにより炎症応答を伴わずに細菌感染防御能を高めることができる可能性、などを示唆しており、アレルギー疾患や感染症に対する新たな予防・治療法の開発に役立つものと考えております。 090122-1.jpg090122-2.jpg090122-3.jpg