東京大学医科学研究所

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発表論文解説

慢性活動性EBウイルス感染症の原因と、身近なウイルスががんを引き起こす仕組みを解明

Nature Microbiology (2019年1月21日付(英国時間)電子版に掲載)
Yusuke Okuno1, Takayuki Murata2, Yoshitaka Sato2, Hideki Muramatsu3, Yoshinori Ito3, Takahiro Watanabe2, Tatsuya Okuno3, Norihiro Murakami3, Kenichi Yoshida4, Akihisa Sawada5, Masami Inoue5, Keisei Kawa5, Masao Seto6, Koichi Ohshima6, Yuichi Shiraishi7, Kenichi Chiba7, Hiroko Tanaka7, Satoru Miyano7, Yohei Narita2, Masahiro Yoshida2, Fumi Goshima2, Jun-ichi Kawada3, Tetsuya Nishida8, Hitoshi Kiyoi8, Seiichi Kato9, Shigeo Nakamura9, Satoko Morishima10, Tetsushi Yoshikawa11, Shigeyoshi Fujiwara12, Norio Shimizu13, Yasushi Isobe14, Masaaki Noguchi15, Atsushi Kikuta16, Keiji Iwatsuki17, Yoshiyuki Takahashi3, Seiji Kojima3, Seishi Ogawa4, and Hiroshi Kimura2
1Center for Advanced Medicine and Clinical Research, 9Department of Pathology and Laboratory Medicine, Nagoya University Hospital, Nagoya, Japan, 2Department of Virology, 3Department of Pediatrics, 8Department of Hematology and Oncology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan, 4Department of Pathology and Tumor Biology, Graduate School of Medicine, Kyoto University, Kyoto, Japan, 5Department of Hematology/Oncology, Osaka Women’s and Children’s Hospital, Osaka, Japan, 6Department of Pathology, Kurume University School of Medicine, Kurume, Fukuoka, Japan, 7Laboratory of DNA Information Analysis, Human Genome Center, Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo, Japan, 10Division of Endocrinology, Diabetes and Metabolism, Hematology, Rheumatology (Second Department of Internal Medicine), Graduate School of Medicine, University of the Ryukyus, Nishihara, Japan, 11Department of Pediatrics, Fujita Health University School of Medicine, Toyoake, Japan, 12Department of Allergy and Clinical Immunology, National Research Institute for Child Health and Development, Tokyo, Japan, 13Center for Stem Cell and Regenerative Medicine, Division of Advanced Biomedical Engineering Research, Institute of Research, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan, 14Division of Hematology and Oncology, Department of Internal Medicine, St. Marianna University School of Medicine, Kawasaki, Japan, 15Department of Hematology, Juntendo University Urayasu Hospital, Urayasu, Japan, 16Department of Pediatric Oncology, Fukushima Medical University School of Medicine, Fukushima, Japan, 17Department of Dermatology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry, and Pharmaceutical Sciences, Okayama, Japan
Defective Epstein-Barr virus in chronic active infection and related hematological malignancy

名古屋大学医学部附属病院(病院長・石黒直樹)先端医療開発部の 奥野 友介(おくの ゆうすけ)特任講師、同大学大学院医学系研究科(研究科長・門松 健治)ウイルス学の 木村 宏(きむら ひろし)教授、藤田医科大学ウイルス・寄生虫学の 村田 貴之(むらた たかゆき)教授、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学の 小川 誠司(おがわ せいし)教授、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの 宮野 悟(みやの さとる)教授らの研究グループは、原因不明の難病である慢性活動性EB ウイルス感染症の遺伝子解析を行い、その原因を解明しました。その過程で、ほとんどの人には感染しても大きな害のないEB ウイルスが、ごく一部の人には血液がんを引き起こしてしまう仕組みが明らかになりました。本研究成果は、英国時間2019 年1 月21 日付Nature Publishing Group の科学誌「Nature Microbiology」の電子版に掲載されました。本研究は、文部科学省科学研究費「統合的遺伝子解析を用いた慢性活動性EB ウイルス感染症の発症の機構の解析」(研究代表者 木村 宏)、日本医療研究開発機構(AMED)感染症研究革新イニシアティブ(J-PRIDE)「新規臨床データと革新的技術の融合で読み解くEB ウイルス再活性化(研究開発代表者 村田貴之)」および難治性疾患実用化研究事業「オミクス解析技術と人工知能技術による難治性造血器疾患の病因解明と診断向上に貢献する解析基盤の開発(研究開発代表者 宮野悟)」の支援を受けて行われました。
EB ウイルスは95%の人が成人までに感染するウイルスの1 種ですが、通常は風邪のような症状だけで治癒します。しかし、ごく一部の人においては、このウイルスはがんや、その他の難病を発症させます。慢性活動性EB ウイルス感染症は、日本で年間約数十人が発症する原因不明の難病です。本来は、数週間程度で収まるEB ウイルス感染に伴う炎症が何年間も持続し、命にかかわる様々な合併症を引き起こします。
本研究グループは、次世代シーケンサーを使った遺伝子解析によって、慢性活動性EB ウイルス感染症が血液がんの一種であることを解明しました。この研究では、ヒトの遺伝子に加えて、EB ウイルスの遺伝子も全て解析しましたが、その過程で、この病気に関わるEB ウイルスは、いくつかの遺伝子を失っており、その結果として異常に活性化して、がんを発症させることが明らかになりました。その後、遺伝子を失ったEB ウイルスが他の血液がんでも見つかり、このウイルスは同じ仕組みで様々な血液がんを発症させることも分かりました。
今回明らかになった発がんの仕組みに基づき、より良い治療法の開発が進むことが、今後、期待されます。