東京大学医科学研究所

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発表論文解説

線維芽細胞によるCyp26b1酵素を介したマスト細胞鎮静化は皮膚の恒常性の維持に必須である

Immunity http://dx.doi.org/10.1016/j.immuni.2014.01.014 (2014)
倉島洋介1–4, 網谷岳朗1,2,4,5, 藤澤久美子1,2, 柴田納央子1,2,4,5, 鈴木裕二1, 小暮優太1,4,5, 橋本えり1,4, 大塚篤司6, 椛島健治6, 佐藤慎太郎1,2, 佐藤健1,4,5, 久保允人7,8, 審良静男9, 三宅健介3, 國澤純1,2,4,5,10,11, 清野宏1,2,5,10
1. Division of Mucosal Immunology, Department of Microbiology and Immunology, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo 108-8639, Japan 2. Core Research for Evolutional Science and Technology, Japan Science and Technology Agency, Tokyo 102-0075, Japan 3. Division of Innate Immunity, Department of Microbiology and Immunology, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo 108-8639, Japan 4. Laboratory of Vaccine Materials, National Institute of Biomedical Innovation, Osaka 567-0085, Japan 5. Department of Medical Genome Science, Graduate School of Frontier Science, The University of Tokyo, Chiba 277-8561, Japan 6. Department of Dermatology, Kyoto University Graduate School of Medicine, Kyoto 606-8501, Japan 7. Laboratory for Cytokine Regulation, Research Center for Integrative Medical Science, RIKEN Yokohama Institute, Kanagawa 230-0045, Japan 8. Division of Molecular Pathology, Research Institute for Biological Sciences, Tokyo University of Sciences, Chiba 278-0022, Japan. 9. Laboratory of Host Defense, WPI Immunology Frontier Research Center, Osaka University, Osaka 565-0871, Japan. 10. International Research and Development Center for Mucosal Vaccines, The Institute of Medical Science, The University of Tokyo, Tokyo 108-8639, Japan 11. Department of Microbiology and Immunology, Kobe University School of Medicine, Kobe 650-0017, Japan
The enzyme Cyp26b1 mediates inhibition of mast cell activation by fibroblasts to maintain skin-barrier homeostasis

アレルギーや炎症を引き起こす免疫細胞の一種にマスト細胞と呼ばれる細胞が存在する。マスト細胞は、皮膚などの結合組織と肺や腸管などの粘膜組織とでは異なる性質を持つことが古くから知られていた。しかし、その特性が組織ごとに異なることの意味やそれぞれの特性がどのようなメカニズムによって調節されているかは不明であった。
東京大学 医科学研究所の倉島 洋介 助教、清野 宏 教授と独立行政法人医薬基盤研究所の國澤 純プロジェクトリーダーらの研究グループは、マウスにおいてマスト細胞が皮膚や肺、腸管などの組織でそれぞれ異なる特性をもつことを確認し、これらの特性は線維芽細胞と呼ばれる結合組織を構成している細胞によって調整されていることを明らかにした。皮膚では、皮膚の線維芽細胞によってビタミンA の濃度が調節されており、過剰なビタミンAや線維芽細胞によるビタミンAを代謝する仕組みが機能しなくなった場合にマスト細胞が異常に活性化し、皮膚炎が誘導されることがわかった。また、皮膚のマスト細胞ではマスト細胞を活性化させる受容体の発現が他の組織より少ないことも見出した。
過剰なビタミンAの摂取が皮膚炎を起こす事例として、高濃度のビタミンAが蓄積されたホッキョクグマの肝臓などを食べる習慣のあるイヌイットでは皮膚障害が引き起こされることが知られており、本研究の成果はこの皮膚障害の発症メカニズムを説明できるものである。本成果は、組織ごとに異なる特性をもつマスト細胞の活性のかく乱が、体のさまざまな部位で起こる慢性的な炎症やアレルギーの発症につながっている可能性を新たに示したものであり、慢性的な炎症やアレルギーに対する予防や治療法の開発につながると期待される。