東京大学医科学研究所

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発表論文解説

腹腔B細胞由来腸管IgA産生経路におけるスフィンゴシン1リン酸の役割

Blood 109:3749-3756, 2007
國澤 純1,2、倉島洋介1,2、合田昌史1,2、樋口森生1,2、石川いずみ1,2、三浦ふみ1,2、小河原郁子1,2、清野 宏1,2
1. 東京大学医科学研究所・感染免疫部門・炎症免疫学分野
2. CREST
Sphingosine 1-phosphate regulates peritoneal B cell trafficking for subsequent intestinal IgA production. Jun Kunisawa, Yosuke Kurashima, Masashi Gohda, Morio Higuchi, Izumi Ishikawa, Fumi Miura, Ikuko Ogahara, and Hiroshi Kiyono Blood 109:3749-3756, 2007

腸管において産生される分泌型IgAは、生体内において最も多く産生される抗体アイソタイプであり、腸管における感染防御分子として重要な役割を担っている。現在、腸管分泌型IgAの産生には二種類の主要経路の存在が知られている。パイエル板に代表されるgut-associated lymphoid tissue (GALT)は、B2細胞を介したT細胞依存的抗原特異的IgA誘導経路となっている。 07101101.png 一方、腹腔はB2細胞に加え、T細胞非依存的抗原に対するIgA産生を産生するB1細胞を多く含み、腸管へのB細胞主要供給部位となっているが、その分化・遊走経路など多くの点が未解明である。今回、我々は腹腔B細胞の腹腔から腸管への遊走制御にスフィンゴシン1リン酸と呼ばれる脂質メディエーターが関与していることを見いだした。スフィンゴシン1リン酸はリンパ球の胸腺や二次リンパ節からの移出を制御することが最近報告された分子であり、新たなリンパ球遊走制御分子として注目されている。腹腔B細胞はB1、B2細胞共にスフィンゴシン1リン酸受容体を高発現しており、スフィンゴシン1リン酸を介したシグナルを遮断すると、腹腔B細胞の遊走が阻害された。またその結果、腹腔B細胞由来腸管IgAの産生が減少した。また肺炎双球菌の経口免疫で誘導されるT細胞非依存的抗原であるphosphorylcholineに対する腸管IgAの産生も減少した。これらの結果は、腸管における生体防御と恒常性維持を行っている分泌型IgAの産生における新しい遊走制御メカニズムを示す結果であると考えられる。