東京大学医科学研究所

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発表論文解説

培養細胞で高い増殖能を持つB型インフルエンザウイルスの作出に成功 ~より迅速に、効率よく季節性ワクチンを製造することが可能に~

PNAS 2016 ; published ahead of print December 5, 2016, doi:10.1073/pnas.1616530113
Jihui Ping, Tiago J. S. Lopes, Gabriele Neumann, and Yoshihiro Kawaoka
Development of high-yield influenza B virus vaccine viruses

東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡義裕教授らの研究グループは、培養細胞で高い増殖能を持つB型インフルエンザウイルスの開発に成功しました。
 現行の季節性インフルエンザワクチンは発育鶏卵で増やしたウイルスから製造されていますが、その増殖過程でウイルスの主要抗原であるヘマグルチニン(HA)に変異が入るとワクチンの有効性が大きく低下することが知られています。抗原変異が起きにくい培養細胞を用いてワクチンを製造することで、この問題を回避することが可能ですが、培養細胞における季節性インフルエンザウイルスの増殖能の低さが大きな問題となっていました。
 本研究グループが1999年に開発した「リバースジェネティクス法」を用いて、多様なB型インフルエンザウイルス株からなる変異体集団(変異ウイルスライブラリ)を人工的に作出しました。そして、その変異ウイルスライブラリから培養細胞で高い増殖能を持つB型インフルエンザウイルス株を選別しました。次に、このB型インフルエンザウイルス高増殖株を母体に野外で流行しているウイルスの主要抗原を入れたウイルス株を作製し、その増殖能を解析しました。その結果、このウイルス株は細胞培養ワクチンの製造でよく利用されている培養細胞において効率よく増殖することが判明しました。
 本研究の成果によって、従来の鶏卵ワクチンに比べ高い有効性が期待できる細胞培養ワクチンをより迅速に製造供給することが可能になります。
 本研究成果は2016年12月5日(米国東部時間 午後3時)、米国科学雑誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」のオンライン速報版で公開されます。
 なお本研究は、東京大学と米国ウィスコンシン大学が共同で行ったものです。本研究成果は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(平成20年度~平成26年度)、日本医療研究開発機構(AMED)革新的先端研究開発支援事業(平成27年度以降)、文部科学省新学術領域研究などの一環として得られました。