東京大学医科学研究所

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発表論文解説

骨髄異形成症候群におけるクローン進化の解明 ―急性白血病を起こす2ステップの遺伝子異常のパターンを発見―

Nature Genetics DOI: 10.1038/ng.3742
Hideki Makishima, Satoru Miyano, Seishi Ogawa, et al.
Dynamics of clonal evolution in myelodysplastic syndromes

急性骨髄性白血病(AML)は代表的な血液がんの一つであり、血液のもとになる造血細胞のゲノムに異常が生ずることによって発症するとされています。近年ゲノム異常を解析する技術が飛躍的に進歩したことに伴い、白血病細胞の詳細なゲノム解析によって、その発症に関わる遺伝子変異の全体像が明らかにされつつあります。しかしながら、白血病が診断される前にゲノム解析を行うことが通常は難しいため、白血病発症に至るまでどのゲノム異常が、どのような順番で起こるかに関しては、これまでほとんど理解されていません。
 一方、骨髄異形成症候群(MDS)は、高齢者に多い血液がんの一つであり数年にわたって慢性の造血障害4を起こしたのち、急性骨髄性白血病を発症することが知られています。いったん急性白血病を起こすと急激に進行し早期に死亡します。したがって、骨髄異形成症候群の慢性の経過中に急性白血病の兆しを検出しその発症を早く予測することは、できるだけ白血病細胞が少ないうちに白血病に対する治療を開始することにつながり、治療効果が高まることが期待されます。
 今回、京都大学腫瘍生物学講座 小川誠司 教授、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター 宮野悟 教授、独国ミュンヘン白血病研究所 Torsten Haferlach 教授、米国クリーブランドクリニック Jaroslaw P. Maciejewski 教授を中心とする国際共同研究チームは、2,250例の骨髄異形成症候群の患者さんに対して、次世代シーケンサー5および理化学研究所に設置された世界有数のスーパーコンピュータ「京」を用いた大規模な遺伝子解析を行い、慢性の骨髄異形成症候群から急性白血病を起こす遺伝子異常を、これまでになく詳細に明らかにしました。今回の研究の主な成果は以下の点です。
①骨髄異形成症候群が急性骨髄性白血病へ進行する際に、2つのタイプのゲノム異常が細胞に蓄積し異常クローンが増大する。
②低リスク骨髄異形成症候群に「タイプ2ゲノム異常」が起こると白血病リスクの高い状態(高リスク)に移行し、「タイプ1ゲノム異常」が起こると急性白血病が起こる。

(京都大学HP)