デクチン1(Dectin-1)は真菌の感染防御に必要
デクチン1(Dectin-1)は真菌の感染防御に必要
カビや酵母など真菌類は抗生物質の生産や酒、みそなどの製造など我々の生活に役立つ反面、カンジダ感染症や水虫など、やっかいな病気の原因でもある。
さらに、Pneumocystis carinii(P. carinii)はエイズ患者や臓器移植患者など、免疫不全状態の人に、命を脅かす重篤な病気(カリニ肺炎)を引き起こす。βグルカンはこれら真菌の細胞 壁を構成する糖鎖の一つであり、Dectin-1はその受容体であることが知られている。本研究では、Dectin-1が真菌の感染防御に重要な役割を果 たしていることを初めて明らかにした。
Dectin-1は細胞膜上に存在するタンパク質で、細胞外に糖鎖を認識する領域を持ち、細胞内にはITAMと呼ばれる活性化シグナルを伝えるモ チーフを持つ。この分子はマクロファージや樹状細胞、好中球などの自然免疫を担う細胞に発現している。この分子がβグルカンの受容体であることから、真菌 感染における役割が注目されていたが、これまでその活性は解明されていなかった。そこで、我々はDectin-1遺伝子を欠損させたマウス(KOマウス) を作製し、感染防御における役割を検討した。P. cariniiを野生型マウスとDectin-1 KOマウスの両方に感染させ、肺での菌数を計数したところ、感染1週後、2週後に野生型マウスに比べ、Dectin-1 KOマウスでは有意に菌数が増加していた。さらに、マウスにコルチゾンを投与し、免疫不全の状態にした場合でもDectin-1 KOマウスでは有意に菌数が増加していた。また、Dectin-1 KOマウスのマクロファージでは、P. carinii刺激によるサイトカイン産生は見られたものの、活性酸素の産生がほとんどみられなかった。これらの結果から、Dectin-1はβグルカン を介しP. cariniiを認識し、その殺菌に重要な役割を果たしている事が示された。これらの知見は、新たな抗真菌薬開発に役立つ可能性がある。