研究内容

RP105/MD-1の機能解析及び自己免疫疾患における役割

我々は、B細胞表面分子として、Radioprotective105をクローニングしました。B細胞に低線量のガンマ線を照射して、B細胞にアポトーシスを誘導し、アポトーシスを回避させるモノクローナル抗体を作成しました。この抗体はB細胞に強い増殖を誘導するとともに、放射線で誘導されるアポトーシスに対する抵抗性を誘導します。その抗体が結合する抗原をRadioprotective 105(RP105)と名前をつけました。この分子は後に発見されるTLR4と細胞外ドメインが類似しておりますが、細胞内ドメインはアミノ酸11個と短く、他のTLRと異なっています。我々はさらにRP105に会合する分子としてMD-1をクローニングし、MD-1の類似分子としてMD-2をクローニングしました。MD-2がRP105と類似する細胞外ドメインを持つTLR4と会合し、LPS認識の主要分子であることは上述したとおりです。

Radioprotective 105

RP105、MD-1遺伝子欠損マウスを作成したところ、B細胞の、TLR2、TLR4のリガンドであるLPS、リポペプチドに対する応答性が低下していることがわかりました。マウスのB細胞はTLR2、TLR4を発現しておりますが、RP105/MD-1はこれらの応答性を補助する役割があるようです。TLR2はTLR1やTLR6と2量体を形成することで、リガンドに応答します。マウスB細胞の表面には、TLR1、TLR2、TLR4/MD-2、TLR6、RP105/MD-1からなる機能的な複合体が存在すると我々は考えています。   さらに興味深いことに、最近、マウスのB細胞表面上のこれらのTLR複合体が、感染がなくとも、常に何らかの刺激を受けており、その刺激によってIgG3のGermline transcriptが誘導されている事を報告しました。この結果は、細胞表面にあるTLRが特に感染がない状態であっても、常在菌か、内因性のリガンドに常に応答している可能性を示唆します。さらに自己免疫疾患モデルマウスであるMRL/lprにおいて、 RP105遺伝子を欠損させると、自己免疫疾患の症状が緩和されることも報告しています。さらなる検討が必要ですが、核酸を認識するTLR7、TLR8、TLR9と同様に、細胞表面に発現するTLRも、常在菌や自己成分に応答し、その応答の制御機構の破綻が自己免疫疾患に寄与する可能性が考えられます。現在この可能性について、検討しています。

B細胞は常にg3 Germline transcriptの誘導刺激を受けている