Introduction

細胞プロセッシングについて

細胞プロセッシング研究部門は近年著しい進展を遂げている細胞治療や遺伝子治療を医科学研究所においてさらに促進させる目的で平成7年秋に開設された新しい研究部門である。
医科研内の他の研究部,附属病院および関連病院と連携して細胞治療の基礎および臨床研究を行う。対象となる細胞は、造血幹細胞、免疫担当細胞、腫瘍細胞等であり、これらを有効かつ安全に利用するために、分離・精製、活性化、増幅、遺伝子導入、保存等の研究を行い、その臨床応用をすすめる。
また赤血球・血小板輸血の安全性向上のためのウイルス不活化法や長期保存法、さらにこれらの人工代替物の開発を目指す。以下に現在進行中のプロジェクトを紹介する。

  • 臍帯血移植─臍帯血幹・前駆細胞について基礎的および実際的な研究を行う。基礎研究として、臍帯血幹・前駆細胞における免疫担当細胞の性状解析をすすめ、GVHDおよびGVLに関する基礎研究を行っている。また、臍帯血移植にはその基盤となる臍帯血バンクが必要となる。そのための安全かつ効率のよい細胞プロセッシング技術を検討してきた結果 に基づいて、医科研内に昨年9月東京臍帯血バンクを設立した。今後保存している臍帯血を用いた臍帯血移植が計画されている。

  • 臍帯血巨核球系前躯細胞の増幅ー臍帯血移植において血小板の回復が遅いことが問題の一つとされる。そこで臨床応用可能なサイトカインや培溶液の組み合わせの系を開発し、巨核球系前躯細胞のin vivo増幅を図る。

  • 細胞の低温保存法の開発─凍結保存が難しい顆粒球や血小板を長期保存する方法を低温生物物理に基づいた科学的なアプローチをもって開発する。

  • ウイルスの光不活化─細胞に存在するウイルスを光と光増感物質を用いて不活化する技術を開発する。

  • 樹状細胞を用いた細胞治療の可能性─細胞治療を目的として、高い抗原提示能を持つ樹状細胞の分離、培養、分化に関する解析をすすめてきた。今後白血病、メラノーマ、固形腫瘍等、癌の細胞治療を開始する予定である。

  • 血液代替物の開発─人工赤血球としてリポソーム包埋ヘモグロビンを中心にその有効性と安全性に関する検討を進めてきた。現在血小板代替物開発の最初のステップとして凍結乾燥血小板の作製を開始し、そのin vivo機能について検討している。

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