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新学術領域「幹細胞老化と疾患」国際活動支援 派遣報告

訪問者:東京工業大学 特別研究員 安藤 和則
訪問先:アメリカ・デューク大学 Kenneth D. Poss 教授
期 間:2018/2/7〜2019/3/31(約1年2ヶ月(予定))
目 的:組織再生特異的なシスエレメントの探索と機能解析
 デューク大学は世界屈指の名門大学で、トップクラスの研究者が多数在籍しています。Kenneth D. Poss教授はその一人で、彼の研究室ではゼブラフィッシュを用いた組織再生メカニズムを研究しています。元は心臓再生が主でしたが、近年、再生時特異的な活性を持つエンハンサーを同定し、現在は再生特異的な遺伝子発現の制御機構の研究にも力を入れています。そのエンハンサーは哺乳類でも機能し、マウスにおける心筋梗塞後の修復促進なども試みられています。人数の多い研究室ですが、Poss教授は個別のディスカッションを重視し、頻繁に意見交換をします。また実験のアプローチや研究の進め方は基本的に個人に任されます。研究室のアクティビティは非常に高く、この2年で7人のポスドクが優れた業績を残して独立しました。ちょうどその入れ替わりの時期の国際学会で、私の発表に興味を持ってくれた彼にポスドクの話を持ち掛け、今回の留学派遣につながりました。特に国際活動支援班のサポートは大きな助けとなっており、この場を借りて心より感謝申し上げます。
 私は東京工業大学の川上厚志先生の研究室においてもゼブラフィッシュの再生研究に携わり、生体内の骨芽前駆細胞を同定しました。それらが正常な骨を維持する重要なソースであることから、前駆細胞の維持が脊椎動物の骨の老化との関連が示唆されました。Poss研究室では、哺乳類にも共通する再生メカニズムを追究しようと、再生特異的な活性を持つ新たなシスエレメントを探索しています。そのようなエレメントは数百から数千のオーダーで存在することが、心臓再生時のクロマチンプロファイルに関する報告から示唆されており、それらの複雑な制御機構が組織再生プログラムを促進していると考えられます。現在、多数のシスエレメントの候補が実際に活性を持つかどうかを調べる、トランスジェニックを用いたスクリーニング方法を確立しています。将来的に同定された新たなシスエレメントをターゲットとし、哺乳類の再生促進因子の発見につながることが期待されます。
新学術領域「幹細胞老化と疾患」国際活動支援 派遣報告
左からKenneth D. Poss教授、筆者