東京大学バイオインフォーマティクス研究シリコンバレー拠点

東京大学シリコンバレー拠点


 生命科学と情報科学は21世紀の科学における最重要分野と位置づけられていますが、この一見異なるふたつの分野は互いに独立に存在するのではなく、さまざまな場面での融合が急速にはじまっています。すなわちゲノム情報の解読に続くバイオインフォーマティクス(アミノ酸配列に基づく蛋白質の構造予測あるいはDNAチップを用いた網羅的遺伝子発現解析法など)の開発が急がれるゆえんといえましょう。しかしながら、我が国はこの分野においてアメリカの先端研究からは大幅な後れを取っています。
 東京大学ではヒトゲノムセンター、情報学環の設立にみられるように、こうした学問の流れを先取した組織作りが積極的にすすめられており、また、大学から産業界への技術移転のための先端科学技術インキュベーションセンター(株)も設立されました。しかしながら生命科学、情報科学の研究あるいは産学連携などについて依然諸外国とりわけ米国からは学ぶべきことは多々あります。
このような状況を打開するため東京大学学術研究奨励資金の援助を受け私たちは米国カリフォルニア州スタンフォード大学の隣接地(メンローパーク)に2000年春、海外学術交流拠点を設けました。本海外拠点は東京大学の海外拠点としてはフィレンツェ、インドネシアに続いて3番目の海外拠点であります。スタンフォード大学は組み換えDNA技術の開発時から一貫してバイオテクノロジーの世界最先端の研究を展開し、大学周辺シリコンバレーに設立された数多くの研究機関とともに世界をリードしています。そこでこの地域での情報収集、学生・研究者の教育並びにスタンフォード大学をはじめこの地域に点在する数多くの最先端研究機関との共同研究の推進をはかるために事務所をスタンフォード大学に隣接して開設しました。事務所にはコンピューター、通信設備、その他事務設備がととのい、10人程度の会合もおこなうことが可能であります。2001年夏より、より便利のよいPalo Alto, University Avenue 720に事務所を移動しました。
 2000年12月には私たちは東大シリコンバレー拠点の設立を内外にアピールしかつ東京大学の研究活動、人材などをこの地の大学、企業の研究者、ベンチャー企業などに幅広く紹介する機会を設けたいと考えUTForum (University Tokyo Forum) 2000をスタンフォード大学構内でおこないました。ご承知のようにUTForumは第一回が2000年はじめにボストンで行われ、本フォーラムは第2回であります。フォーラムは二日間に渡り、初日午前はプレフォーラムとして日米の大学関係者、バイオベンチャー創設者が大学の研究とバイオ起業についての日米の実情を語り、午後にはサイトビジットとしてカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の建設中の新キャンパスミッションベイ、南サンフランシスコからパロアルトのバイオベンチャー企業数社の見学をおこない最終訪問先のベンチャー企業では東大主催の夕食会をおこない交流を深めました。15日のUTForumでは前半に蓮實総長、スタンフォード学長John Hennesy博士、UCSF副学長Zach Hall博士、東大医科研新井賢一所長により大学運営の現状と将来構想について講演があり、後半は3大学に所属する生命科学の研究者による講演がおこなわれました。本シンポジウムには東大の学生20名を含む100名以上の大学関係者、企業関係者などが日本より参加し、シリコンバレー地域の現状について直接の見聞をひろげるのみならず、参加者間での交流の機会ともなりました。このように本シンポジウムは通常の学術交流のみならず大学の研究者、経営者、企業の研究者、経営者さらには政府機関の関係者が新しい提携による戦略構想を模索する貴重な場を提供したと私たちは自負しております。本シンポジウムのプログラムなどの記録については「活動の記録」をごらんください。