●種々のシグナル伝達系で酵素活性を持たないアダプター蛋白質が膜蛋白受容体と下流の酵素群との連結を制御している。リンパ球に発現するアダプター蛋白質Lnkおよびその類似蛋白質群(図:lnk family)に注目し、それらの役割を遺伝子改変マウスを作製して検討している。Lnk欠損マウスではpro-B細胞の過剰増殖が観察され(図:lnk&B)、Lnkがc-kitチロシンキナーゼ型受容体からのシグナルを負に制御することによりB細胞産生を制御することを明らかにした(図:lnk&SCF)。

●Lnkファミリー蛋白質はチロシンキナーゼからのシグナル伝達の新しい制御機構を担っており、生体の恒常性維持に重要な役割を果たすことが考えられる。またLnk欠損マウス骨髄では造血前駆細胞の増加が観察され(図:lnk&CFUS)、さらに正常造血前駆細胞と競合条件下に骨髄移植しレシピエント内での造血能を比較したところLnk欠損造血前駆細胞の造血能が著しく亢進していることが明らかになった(図:lnk&HSC)。

●Lnkは、造血幹細胞および前駆細胞の機能制御に重要な働きを持っており、その作用制御により造血幹細胞・前駆細胞の増幅法確立への応用の可能性が期待される。Lnkがどのようにして抑制作用を発揮するのか、その作用機構について分子レベルでの解析を推進している(図:lnk&cKit)。  またLnkとアダプタータンパク質ファミリーを形成するAPS, SH2-Bの遺伝子欠損マウスの作製に成功しており、これらのアダプタータンパク質の生理機能の解明を試みている。APS欠損マウスでは腹腔内B-1細胞の増加、胸腺非依存性抗原に対する抗体産生の亢進がみられ、APSがB-1細胞の発生ないし維持に深く関与していることが示唆された(図:APS)。

●SH2-B欠損マウスの骨髄、脾臓、リンパ節の免疫担当細胞の分化には異常はみられなかったものの、成長障害と生殖器官の成熟障害がみられ、その分子機構を解析している。


   

Ink family


Ink&CFUS


Ink&cKit

Ink&B


Ink&HSC


APS