研究内容

RNAウイルスの病原性発現機構の解明

宿主特異性決定機構 多様な病原性発現機構 神経病原性発現機構 免疫抑制機構
 
近年エマージングウイルス感染症が次々と出現し、社会的な問題を引き起こしています。エボラ、ニパ、マールブルグなどその多くが(-)鎖・一本鎖・RNAウイルス(モノネガウイルス)に含まれます。
 これらの感染症は、人間社会の拡大によってこれまで接することがなかった本来の自然宿主から、動物の種を越えて伝播したことによると考えられています。しかし、種を越える機構や、強い病原性を発現する機構は、いまだに解明されていません。
 我々は、このウイルス群に属するモービリウイルス属の3種のウイルス(麻疹ウイルス、イヌジステンパーウイルス、牛疫ウイルス)において、cDNAクローンから感染性ウイルスを作出する『新リバースジェネティクス』を世界に先駆けて開発しました。
 また、人に対し高い致死率の脳炎を誘発するニパウイルスにおいても、2006年に世界で初めてのリバースジェネティクス系の確立に成功しました。
 これらの実験系を用いて、ウイルス遺伝子や蛋白の機能解析、ウイルスと宿主因子の相互作用の全貌を明らかにし、ウイルスと宿主との攻防や、動物種を規定する機序、病原性発現機構の解明に向けて研究しています。

組換え麻疹ウイルスを用いた新規癌治療法の開発

 麻疹ウイルスは癌細胞に感染して殺傷する力を持っています。私たちは、麻疹ウイルスのリバースジェネティクス系を利用して、癌細胞に対する感染・殺傷能力を保持したまま弱毒化した組換えウイルスの作出に成功しました。現在、この組換え麻疹ウイルスを使った新たな癌治療法の開発に向けて、橋渡し研究を進めています。

組換えウイルスベクターの開発

 モービリウイルス属のウイルスは、その感染細胞域の広さや安全性から遺伝子治療用ウイルスベクターとしての可能性が期待されています。また感染後終生免疫効果が持続することや、細胞性免疫誘導能が高いことから、優れたワクチンベクターとしての可能性も高いと考えられます。我々は新リバースジェネティクス系を用いた遺伝子組換えによって、これら目的に応用可能な新しいウイルスベクターの開発を試みています。

抗原虫病組換えウイルスワクチンの開発

 マラリア症やリーシュマニア症等はWHOにより6大感染症に指定されており、その被害は甚大です。しかしその予防法の開発は他の原虫病と同様極めて困難で、未だ実用化に至った有効なワクチンはなく、その開発が待望されています。我々は新しい組換えウイルス技術を用いて、その予防法の開発研究も行っています。