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発表論文解説

Unc93 homolog B1による核酸認識系Toll-like receptorの相反的な応答バランス制御は、 内因性リガンド由来の慢性炎症である「自然炎症」の致死化を防ぐ

Immunity (DOI 10.1016/j.immuni.2011.05.010) [Epub ahead of print]
福井竜太郎1、齋藤伸一郎1、菅野敦夫1、恩地正浩1、柴田琢磨1, 2、伊藤彰彦4、恩地森一5、松本満6、審良静男7,8、吉田進昭3、三宅健介1,2
1.東京大学医科学研究所感染遺伝学分野、2.システム疾患モデル研究センター自然免疫研究分野、3.システム疾患モデル研究センター発生工学研究分野、4.近畿大学医学部病理学講座、5.愛媛大学先端病態制御内科学、6.徳島大学疾患酵素学研究センター免疫病態研究部門、7.大阪大学免疫学フロンティア研究センター自然免疫学研究室、8.微生物病研究所自然免疫学分野
Unc93B1 Restricts Systemic Lethal Inflammation by Orchestrating Toll-like Receptor 7 and 9 Trafficking. Ryutaro Fukui, Shin-Ichiroh Saitoh, Atsuo Kanno, Masahiro Onji, Takuma Shibata, Akihiko Ito, Morikazu Onji, Mitsuru Matsumoto, Shizuo Akira, Nobuaki Yoshida, and Kensuke Miyake

自然免疫系に属するToll-like receptors (TLRs)は病原体に共通する構造を認識し、迅速な免疫応答を惹起する分子群である。TLRファミリーに属する分子のうちTLR7やTLR9はウイルスなどの核酸を認識する一方で、宿主由来の核酸をも認識して自己免疫疾患などを誘発する性質を持っている。そのため、TLRの応答性は宿主にとって不利益にならないよう適切に保たれている必要があり、様々な分子がTLRの応答制御に関わっている。このような分子のうち、我々はUnc93 homolog B1 (Unc93B1)と呼ばれる分子が核酸認識系TLRの応答性を制御していることを発見した。すなわち、Unc93B1は定常時においてTLR9優位な応答性を保つことにより、TLR7の応答性を抑制するという相反的な応答制御を行っている。この機能は34番目のアスパラギン酸付近に依存的なものであり、34番目のアスパラギン酸をアラニンに置換した変異体(D34A変異体)はTLR7の応答性を亢進させると同時にTLR9の応答性を減弱させる (Fukui et al., J. Exp. Med. 2009)。

我々は、生体における相反的なTLR7/TLR9応答バランスの意義を検討するため、Unc93B1にD34A変異を持つノックインマウス(D34Aマウス)を作製して解析を行った。D34AマウスはTLR7の応答性が亢進し、TLR9の応答性が減弱した結果、脾腫、肝炎、血小板減少症などの多彩な表現型が自然に誘導され、死に至る。これらの表現型には活性化されたリンパ球系細胞が関わっており、B細胞を欠損させたD34AマウスはT細胞の活性化が起こらず、多くの表現型が見られなくなる。以上のことから、相反的なTLR7/TLR9応答バランス制御は生体の恒常性を保つために重要であり、内因性リガンド由来の慢性炎症である「自然炎症」が不可逆的・致死的な段階に移行することを防いでいると考えられる。