東京大学医科学研究所

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発表論文解説

ニパウイルスのリバースジェネティクス系の確立

Proc. Natl. Acad. Sci.,USA, 103(44), 16508-16513, 2006
米田美佐子、Guillaume, V、池田房子、佐藤宏樹、Wild, T. F. 、甲斐知恵子
実験動物研究施設
Yoneda, M., Guillaume, V., Ikeda, F., Sakuma, Y., Sato, H., Wild, T. F. and Kai, C. Establishment of a Nipah virus rescue system. Proc. Natl. Acad. Sci.,USA, 103(44), 16508-16513, 2006.

ニパウイルスは1998年マレーシアに出現し、致死率70%で100名以上の患者を死亡させた新興感染症である。後に自然宿主はオオコウモリと同定されたが、ブタを介して養豚業者に多くの感染者を出したことから、流行を制圧するため100万頭以上のブタの殺処分が政府によって行われ、経済的にも大きな被害を与えた。マレーシアでは発生は終息したが、現在でもバングラディシュを中心に発生しており、致死率は70%に及んでいる。本研究では、ニパウイルスの基礎的研究を進めるため、そのウイルス遺伝子から感染性ウイルスを作出する系の確立に取り組み、世界で初めてその確立に成功した。本技術を用いて、まずウイルス増殖細胞を可視化するために、EGFPを挿入した組換えニパウイルスを作出して、感染細胞種を検索した。その結果、ニパウイルスのレセプターを発現していながらウイルスが増殖しない細胞を見いだし、ウイルス増殖にはレセプター以外の宿主因子も必要であることを示唆した。この技術を用いることによって、病原性や異なる動物種への感染に関わるウイルス遺伝子を研究することが容易となった。またこの技術を用いれば、遺伝子改変による弱毒化ワクチン開発も可能である。このように、本技術は基礎研究にも応用研究にも極めて有用であり、ニパウイルス研究を推進する強力な武器となると考えられる。

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