東京大学医科学研究所

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発表論文解説

がんの悪性化にアミノ酸が関与~骨髄性白血病の悪性化を担うアミノ酸代謝経路を同定

Nature(5月17日オンライン版) DOI番号:10.1038/nature22314
Ayuna Hattori, Makoto Tsunoda, Takaaki Konuma, Masayuki Kobayashi, Tamas Nagy, John Glushka, Fariba Tayyari, Daniel McSkimming, Natarajan Kannan, Arinobu Tojo, Arthur S. Edison, Takahiro Ito*
Cancer progression by reprogrammed BCAA metabolism in myeloid leukemia

がん細胞は、その活発な増殖や転移などを可能にするため、正常細胞とは異なる代謝活動を行うことが知られています。代謝リプログラミングと総称されるこの現象は、がん細胞の生存・分裂に必要なエネルギーの産生やタンパク質・核酸などの生体高分子の供給に重要であり、最近ではがんが体内で生き延びるための重要な戦略のひとつと考えられるようになりました。しかしながら、代謝リプログラミング自体ががんの進展・悪性化を制御しているかについては、明らかではありませんでした。
今回、東京大学大学院薬学系研究科の角田誠講師、東京大学医科学研究所の小沼貴晶助教、東條有伸教授、米国ジョージア大学の服部鮎奈研究員、伊藤貴浩助教授らの共同研究グループは、慢性骨髄性白血病の悪性化に伴って分岐鎖アミノ酸の産生が亢進していることを見いだしました。また、この産生亢進を引き起こす因子としてアミノ酸代謝酵素BCAT1を同定し、この酵素を阻害するとヒト白血病細胞の増殖およびマウスモデルで白血病発症を阻止できることを示しました。一方、BCAT1は正常造血細胞には殆ど存在せず、機能的にも必須でありませんでした。本研究では、BCAT1を標的とすることでがん細胞に選択的に作用し、悪性化を遅らせる新しい治療法開発の可能性を提示しました。
本研究成果は、2017年5月17日(日本時間18日)に国際科学誌「Nature」オンライン版で公開されます。