東京大学医科学研究所

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発表論文解説

季節性インフルエンザウイルスの抗原変異を予測する新規技術を開発 ~より有効なワクチン製造が可能に~

Nature Microbiology 5月23日オンライン版 DOI番号:10.1038/nmicrobiol.2016.58.
Chengjun Li, Masato Hatta, David F. Burke, Jihui Ping, Ying Zhang, Makoto Ozawa, Andrew S. Taft, Subash C. Das, Anthony P. Hanson, Jiasheng Song, Masaki Imai, Peter R. Wilker, Tokiko Watanabe, Shinji Watanabe, Mutsumi Ito, Kiyoko Iwatsuki-Horimoto, Colin A. Russell, Sarah L. James, Eugene Skepner, Eileen A. Maher, Gabriele Neumann, Alexander I. Klimov, Anne Kelso, John McCauley, Dayan Wang, Yuelong Shu, Takato Odagiri, Masato Tashiro, Xiyan Xu, David E. Wentworth, Jacqueline M. Katz, Nancy J. Cox, Derek J. Smith & Yoshihiro Kawaoka
Selection of antigenically advanced variants of seasonal influenza viruses

東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野の河岡教授らの研究グループは、季節性インフルエンザウイルスの抗原変異を高い精度で予測する技術の開発に成功しました。
 季節性インフルエンザに対するワクチンは、その発症や重症化を防ぐ効果がありますが、ワクチン製造で使われるウイルス(ワクチン株)と実際に流行したウイルスとの間で、ウイルスの主要抗原であるヘマグルチニン(HA)の抗原性が一致しないと、ワクチンの予防効果が弱まります。そのため、頻繁に抗原変異が起こる季節性ウイルスに対しては、毎年のようにワクチン株を見直す必要があります。しかし、現行の技術では、抗原変異の予測を誤ることがあり、ワクチンの予防効果が十分に発揮されないことがあります。
 本研究では、本研究グループが1999年に開発した「リバースジェネティクス法」を用いて、多様な抗原性を持つ季節性ウイルス株の集団(ウイルスライブラリー)を人工的に作出しました。そして、季節性ウイルスに対する抗血清を用いて、ウイルスライブラリーからさまざまな抗原変異株を単離し、それらの遺伝子性状および抗原性状を分析することにより、将来起こる季節性ウイルスの抗原変異を、従来よりも高い精度で予測できる技術を開発しました。
 本研究の成果によって、実際の流行株とワクチン株の抗原性が一致しないリスクが低減され、より有効なワクチンの製造が可能になります。
 本研究成果は、2016年5月23日(米国東部時間 午前11時)、英国科学雑誌「Nature Microbiology」のオンライン速報版で公開されます。
 なお本研究は、東京大学、米国ウィスコンシン大学、英国ケンブリッジ大学が共同で行ったものです。本研究成果は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業、日本医療研究開発機構(AMED)(平成27年度以降)革新的先端研究開発支援事業、文部科学省感染症研究国際ネットワーク推進プログラムなどの一環として得られました。