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発表論文解説

胆道がんにおける大規模ゲノム解読 新規治療標的ゲノム異常と発生部位ごとの分子学的特徴を解明、予後不良群での免疫チェックポイント療法の有効性を示唆

Nature Genetics DOI 10.1038/ng.3375
国立がん研究センター:Hiromi Nakamura, Yasuhito Arai, Yasushi Totoki, Asmaa Elzawahry, Mamoru Kato, Natsuko Hama, Fumie Hosoda, Tomoko Urushidate, Shoko Ohashi, Nobuyoshi Hiraoka, Hidenori Ojima, Kazuaki Shimada, Takuji Okusaka, Tomoo Kosuge,Tatsuhiro Shibata*     東京大学医科学研究所:Tomoko Urushidate, Tatsuhiro Shibata* 信州大学:Tomoki Shirota, Shinichi Miyagawa
Genomic spectra of biliary tract cancer

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、東京都中央区、略称:国がん)は、大規模な胆道がんのゲノム(DNA)ならびにトランスクリプトーム(RNA)解読を行い、新たな治療標的となりうる新規ゲノム異常や発生部位(肝内および肝外胆管、胆のう)ごとの特徴を明らかしました。また遺伝子発現データから予後不良群を同定し、同群で免疫チェックポイント療法が有効である可能性を報告しました。
本研究は、国際共同ゲノムプロジェクト「国際がんゲノムコンソーシアム」(International Cancer Genome Consortium:ICGC 、www.icgc.org)の一環として、研究所 がんゲノミクス研究分野(分野長:柴田龍弘)の研究グループが厚生労働省ならびに2015年度からは日本医療研究開発機構(AMED)の「革新的がん医療実用化研究事業」の支援を受けて行ったもので、国際科学誌「Nature Genetics(電子版)」に2015年8月10日付(日本時間8月11日午前0時)で発表されました。
URL: http://www.nature.com/ng/journal/vaop/ncurrent/full/ng.3375.html
胆道がん(肝内および肝外胆管がん、胆のうがんの総称)は日本をはじめアジアで多いがんですが、近年は欧米でも増加傾向にあります。しかし、分子標的薬を含めてこれまで有効な治療法が確立しておらず、本邦における5年生存率は20%以下と膵がんに続く予後不良ながんです。
本研究では、胆道がんにおける治療標的の同定とそれを起点とした新たな治療法の開発を目指し、世界最大規模となる260例の臨床検体についてゲノム(DNA)ならびにトランスクリプトーム(RNA)の解析を行い、胆道がんにおけるゲノム異常の全貌を明らかにしました。
免疫チェックポイントは、がんが免疫細胞の機能を抑制し、宿主免疫細胞による攻撃から逃れる機構としても知られ、最近では免疫チェックポイント阻害薬ががんに対する治療として世界的に注目されています。すでに免疫チェックポイント阻害薬は大規模臨床試験においてメラノーマ(皮膚がんの一種)や肺がんに対する有効性が示されており、他のがん種に対しても現在、精力的に開発が進められています。今回の研究結果から、一部の胆道がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬に反応する可能性が示唆され、今後、胆道がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発推進が期待されます。