東京大学医科学研究所

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発表論文解説

ドラッグリプロファイリングによる中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス感染を阻害する薬物の同定

Antimicrobial Agents and Chemotherapy DOI: 10.1128/AAC.01043-16
Mizuki Yamamoto, Shutoku Matsuyama, Xiao Li, Makoto Takeda, Yasushi Kawaguchi, Jun-ichiro Inoue*, and Zene Matsuda*
Identification of nafamostat as a potent inhibitor of Middle East respiratory syndrome (MERS) corona virus S-mediated membrane fusion using the split protein-based cell-cell fusion assay

東京大学医科学研究所アジア感染症研究拠点の井上純一郎教授と山本瑞生特任研究員は同拠点松田善衛特任教授らの研究グループによって開発されたデュアルスプリットプロテイン(DSP)と呼ばれるレポーター蛋白質を応用し、中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスであるMERSコロナウイルスが細胞に侵入する最初の過程であるウイルス外膜と細胞膜との融合を感染性の生ウイルスを使用せずに安全、簡便かつ定量的に評価できる膜融合ハイスループット測定系を開発した。この測定系を用いてドラッグリプロファイリングを目的に既に臨床適用されている薬剤を対象にスクリーニングを実施した結果、セリンプロテアーゼ阻害剤であるnafamostatが従来発表されている融合阻害剤に比べて約100分の1の低濃度で膜融合を阻害する事を見いだした。また、国立感染症研究所ウイルス第3部竹田誠部長、松山州徳室長らとの共同研究により実際にnafamostatがMERSコロナウイルスの細胞への感染を低濃度で阻害する事も確認した。
 中東呼吸器症候群は2012年に発見された新興ウイルス感染症で、基礎疾患を持つ個人においては40%に上る致死率を持つと考えられている。現在まで有効なワクチンや薬剤は実用化されていない。今回発見されたnafamostatは他疾患での臨床使用が認められている薬剤であることから、その派生化合物の解析などを含めて本成果は中東呼吸器症候群の治療法開発に大きく貢献すると期待される。本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による感染症研究国際展開戦略プログラム(J-GRID)の支援を受けた。