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発表論文解説

安全なiPS細胞由来T細胞療法の実現へ ~有効で安全な免疫細胞治療へ大きな一歩~

Stem Cell Reports 2015年8月27日Advanced Online版で掲載、10月号に本掲載予定 DOI 番号:Stem Cell Reports (2015), http://dx.doi.org/10.1016/j.stemcr.2015.07.011
安藤 美樹1,西村 聡修1,11、山崎 聡 1、山口 智之1、立川(川名) 愛2,10、葉山 智工1、中内 祐介1、安藤 純5、大田 泰徳3、高橋 聡4、西村 健6、大高 真奈美7、中西 真人7、John J Miles8、 Scott R Burrows8、 Malcolm K Brenner9、中内 啓光1,11
1. 東京大学医科学研究所・幹細胞治療研究センター・幹細胞治療分野、 2. 東京大学医科学研究所・先端医療研究センター・感染症部門、 3.東京大学医科学研究所附属病院病理部 、 4. 東京大学医科学研究所・先端医療研究センター・分子療法分野、 5. 順天堂大学医学部血液内科、 6. 筑波大学医学医療系遺伝子制御学、 7. 産業技術総合研究所・創薬基盤研究部門、 8. QIMR Berghofer Medical Research Institute、9. Center for Cell and Gene Therapy, Baylor College of Medicine、10. 国立感染症研究所・エイズ研究センター第二室、11. Institute for Stem Cell Biology and Regenerative Medicine, Stanford University School of Medicine
A Safeguard System for Induced Pluripotent Stem-Cell Derived Rejuvenated T-cell Therapy

東京大学医科学研究所附属幹細胞治療研究センターの中内啓光教授、安藤美樹日本学術振興会特別研究員RPDらの研究グループは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の技術を応用して若返らせたヒトの免疫細胞(T細胞)がマウスの体内で標的の腫瘍を効果的に縮小させることを確認しました。さらに同研究グループは、使用するT細胞に薬剤で細胞死を誘導できる自殺遺伝子を組み込むことによりiPS細胞由来T細胞療法の安全性を高めることにも成功しました。本成果により、この治療法が臨床に応用されるために必要な橋渡し研究が加速されると期待されます。
 同研究グループは、2013年にiPS細胞から免疫細胞の一種であるキラーT細胞を若返えった状態で作り出す技術の開発に成功しています。しかし、本技術をより安全に臨床に応用するためには、iPS細胞ががん化した場合や副作用が生じた場合に、これらを制御できる必要がありました。
 今回、同研究グループは試験管の中だけでなく、マウスの体内においてもこれらの若返ったキラーT細胞が効果的に腫瘍を縮小させることを実験的に証明しました。さらに細胞の自殺を促すiCaspase9という遺伝子をiPS細胞に組み込み、そのiPS細胞から若返ったキラーT細胞を作製することに成功しました。このT細胞は、iPS細胞に由来しない通常のキラーT細胞に比べてマウス体内に移植した腫瘍を効果的に縮小させる効果が見られ、腫瘍を移植したマウスの生存期間も伸びることがわかりました。また特定の薬剤を投与することにより、iPS細胞由来T細胞に細胞死を誘導できることも確認し、副作用が現れた時にはこの薬剤を投与することによって、症状を止めることができることを確認しました。
 今回の成果により、iPS細胞由来T細胞療法のあらゆる過程でおこりうる副作用を確実に制御できるようになり、安全かつ有効なT細胞療法の実現に繋がると期待されます。またこの安全装置は他のiPS細胞由来の細胞治療へも応用可能です。
本研究はJSPS科研費 15J40133の助成を受けて行われたものです。