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組換えVSV を用いた、VSV、HIV-1 及び Ebola virus 由来L ドメインの機能解析

学友会セミナー

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2005年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成17年2月24日(木) 17:00~18:30
開催場所: 総合研究棟4階 会議室
講  師: 入江 崇
所  属: Department of Pathobiology, School of Veterinary Medicine, University of Pennsylvania, USA
演  題: 組換えVSV を用いた、VSV、HIV-1 及び Ebola virus 由来L ドメインの機能解析
概  要:

様々なエンベロープウイルスのマトリクス蛋白、Gag 蛋白は、ウイルスの出芽に重要な役割を果たしており、 単独発現でウイルス様の粒子(virus-like particle, VLP)が形成され、培養上清中に放出される。 この機能に重要な3種類のLドメインモチーフ(PPxY、PT/SAP、YxxL)がこれまでに同定されており、 それぞれ異なる宿主タンパク質(Nedd4-like E3ubiquitin ligases、Tsg101、AIP-1)と相互作用することが報告されている。 レトロウイルスでは、いずれのL ドメインを持つウイルスも共通の経路を出芽に利用している事が示唆されている。 しかし、それ以外のウイルスでの比較はあまりなされておらず、ウイルスレベルでの研究もほとんどなされていない。 本研究では、異なる科に属する3種類のウイルス(VSV、Ebola virus、HIV-1)について、Lドメインの機能の比較を 目的とし、VSV M蛋白中のPPPY又はPSAPモチーフを含むアミノ酸領域をEbola VP40及びHIV-1 p6Gag由来のLドメイン領域に 置換した組換えVSV(M40 及びM6)を作製し、その基本的性質及び宿主タンパクの関与について検討し以下の結果を得た。 (1) HIV-1 p6Gag及びEbola VP40由来のLドメイン(PTAP及びPTAPPEY)は、VSVのバックボーンでも機能し、 ウイルス粒子の形態、蛋白の組成などに変化は見られない。 (2)VSV M蛋白のPSAPモチーフはLドメインとしての機能を持たないが、前後いずれかの4アミノ酸をHIV-1の PTAPモチーフ由来のものに置き換える事により活性を獲得する。 (3) オーバーラップしたEbola VP40 由来のPTAP 及びPPEY モチーフは、それぞれ単独でL ドメインとして機能する。 (4) 宿主由来のNedd4及びTsg101は、それぞれPPxY及びPT/SAPモチーフの活性に依存して組換えウイルス粒子中に 取り込まれる。 (5) M40及びM6PY>A4等のVSV 由来のPPPY モチーフを持たないウイルスは、 Tsg101 の発現抑制及び酵素活性を欠いたVPS4 の過剰発現に対して感受性を示すが、 VSV 由来のPPPY モチーフをもつ組換えウイルスは、その影響を受けない。 (6) M6 及びM6PY>A4 のウイルスゲノム中に酵素活性を欠いたNedd4 遺伝子を組み込んだウイルスは容易に得られたが、 VSV-WT 及びM40 に組み込んだウイルスはこれまでのところ得られていない。

以上の結果から、組換えVSV を用いたシステムは、特にEbola virus の様なレベル4ウイルスのLドメインの機能を解析する上で有用なシステムであり、PPPYモチーフを持つラブドウイルスは、PTAPモチーフを持つウイルスやレトロウイルスなどとは異なる経路を利用していることが示唆された。

世 話 人: 癌細胞シグナル分野 山本  雅
○ウィルス感染分野 河岡 義裕