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「網膜再生医療に関連した諸問題」

学友会セミナー

学友会セミナー

2005年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成17年9月20日(火) 15:00~16:00
開催場所: 合同ラボ棟 2階会議室
講  師: 谷原 秀信
所  属: 熊本大学・大学院医学薬学研究部・視機能病態学分野教授
演  題: 「網膜再生医療に関連した諸問題」
概  要:

日本を含めて先進国における主要な失明原因(もしくはそれに準じる重篤な視覚障害)は、網膜疾患(糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、網膜色素変性症)と緑内障である。緑内障の視覚障害の本態は、網膜視神経の視覚神経回路網を構成する神経細胞の細胞死による視覚機能の破綻で共通していると言える。現在の眼科治療のほとんどは、神経細胞死の原因を解除する形で行われているが、既に生じた視覚障害を改善することは難しい。新しい治療概念として、神経保護と網膜再生医療の可能性が期待されているが、いずれも臨床的に信頼に価する治療効果のエビデンスが得られていない。

神経幹細胞や網膜色素上皮の移植は、視覚機能を喪失させる緑内障や網膜硝子体疾患などの失明性眼疾患に対する根本的な治療概念になりえる。実際に、網膜再生医療は、臨床的にもいくつかの試みがなされてきたが、視機能の改善を立証できた試みは少なく明白な限界がみられる。単なる神経幹細胞や網膜色素上皮の移植・生着は可能であることが既に確認されているが、視覚神経回路網を再建するためには不十分である。網膜視神経再生医療の臨床応用においては、細胞資源の高効率な培養手法の確立、幹細胞の分化誘導制御技術の開発、軸索伸張の制御が不可避である。これらの諸問題を正しく解決するためには、手術的な移植技術に加えて、補完的な薬物療法の開発と応用が重要となると考えられ、トランスレーショナルリサーチとして、再生医療に関連する諸問題を解決するために、基礎研究と臨床の協力関係の構築が重要となる。

世 話 人: ○再生基礎医科学寄附研究部門 渡辺 すみ子
神経ネットワーク分野 真鍋 俊也