「癌の浸潤・転移機構への遺伝学的アプローチ」
学友会セミナー
学友会セミナー
2005年開催 学友会セミナー
開催日時: | 平成17年9月7日(水) 16:00~17:00 |
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開催場所: | 白金ホール |
講 師: | 井垣 達吏 博士 |
所 属: | エール大学医学部・ハワードヒューズ医学研究所 |
演 題: | 「癌の浸潤・転移機構への遺伝学的アプローチ」 |
概 要: | 癌のほとんどは上皮由来であり、悪性化に伴ってそのapicobasal polarityを喪失する。しかしながら、極性の喪失がどのような機構によって細胞の浸潤・転移に寄与しているのかはほとんど不明である。我々は癌原性Rasにより誘導されるショウジョウバエ癌進行モデルを利用し、極性の喪失と腫瘍細胞の増殖・浸潤とをリンクする分子メカニズムを遺伝学的に明らかにした。極性遺伝子の喪失は、c-Jun N-terminal kinase (JNK)の活性化及び E-cadherinのdown-regulationを引き起こし、これら2つのイベントがRas誘導性の腫瘍細胞の浸潤に必要十分であることが分かった。さらに、JNKは癌原性Ras存在下でその機能を「pro-apoptotic」から「pro-growth」にスイッチし、Rasシグナルと協調して腫瘍の成長を促進することが明らかとなった。単一の遺伝子変異が腫瘍細胞の増殖と浸潤の両方を促進するという結果は、癌転移を誘導する遺伝子変異がその増殖促進能によって選択されるという可能性を示唆している。 本セミナーではさらに、我々が現在行っている「癌の浸潤・転移を誘導する遺伝子変異の遺伝学的スクリーニング」についても紹介したい。 |
世 話 人: | ○腫瘍分子医学分野 竹縄 忠臣 癌遺伝形質分野 三木 裕明 |