風疹ウイルスの疫学と分子考古学
学友会セミナー
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2004年開催 学友会セミナー
開催日時: | 平成16年10月12日(火) 14:00 ~ 15:00 |
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開催場所: | アムジェンホール 大会議室 |
講 師: | 加 藤 茂 孝 博士 |
所 属: | 米国厚生省疾病管理・予防センター(CDC、Atlanta, USA) |
演 題: | 風疹ウイルスの疫学と分子考古学 |
概 要: | 1) 分子疫学
風疹ウイルスの遺伝子型は大きく1型と2型とに分かれる。 1型は更に1A,1B, 1C, 1D, 1E,1Fの6型で、 2型は2A, 2B, 2Cの3型で構成される。 1Aは1960年代の早い時期の分離株と蒙古、ミャンマーの1部の国での最近の流行ウイルス株、1Bはヨーロッパを中心に、アフリカ、南米東海岸、1Cは北米全体と南米の西海岸、1Dはアジアとニュージランド、1E は最近の世界の流行株、1Fはロシアと中国のみと言う様に、その型の分布には、地域性と時代性が見られる。系統樹で見ると全ての1型は1Aから進化して来た様に見える。 2型は、2Aがアジア、イタリー、南アフリカに分布するが、2Bは中国のみ、2Cはロシアのみと地域限局性が1型よりも強く、また型内の変異幅が大きい。 この遺伝子型の地域性を利用すると、ウイルス株の移動(輸入、輸出)が判定できる。 2) 分子考古学1型および2型のウイルス株が分離された時代と遺伝子上での変異の蓄積との間に回帰性が見られ、変異の蓄積がゼロであった時代を求めると、1型は1940年、2型は1843年と計算される。この事から、1型は1940年に出現し、瞬く間に世界に広がったものと考えられる。初めて先天性風疹症候群(CRS)が報告されたのが1941年であるので、この1940年と言う推定年は、風疹の流行に関して大きな意味があるものと思われる。 風疹ウイルスは類縁のウイルスが存在せず、また人以外には自然宿主が知られておらず、その進化的起源について謎が多く、大変興味深いウイルスである。 |
世 話 人: | 実験動物研究施設 甲斐 知恵子 ウィルス感染分野 河岡 義裕 |