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「骨髄細胞を用いた血管新生療法と内皮前駆細胞の診断的役割」

学友会セミナー

学友会セミナー

2004年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成16年3月2日(火)  16:30~18:00
開催場所: 合同ラボ棟、2階会議室
講  師: 室原 豊明 博士
所  属: 名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科
演  題: 「骨髄細胞を用いた血管新生療法と内皮前駆細胞の診断的役割」
概  要:

重症虚血肢や重症虚血性心疾患に対して、側副血行路を増やすことにより治療を行おうとする試みが、 1990年代の初めから開始された。VEGF を中心とした遺伝子治療により始まった血管新生療法は、「血管再生療法」の一つとして広く認知されるに至った。

1997年、浅原博士らにより成人の末梢血中に内皮前駆細胞が発見されたのを機会に、この細胞を培養して移植するといういわゆる血管の前駆細胞治療も検討されるようになってきた。実際に培養拡張した内皮前駆細胞を移植することにより、免疫抑制動物の重症下肢虚血組織に血管新生を誘導できる事が示され、さらに組織救済が図れることが証明された。しかしながら臨床応用を考えた場合、これらの細胞培養にはGMP基準の細胞培養施設が必須であることと、移植するに足る十分な細胞数が果たして得られるか、などの問題に直面し、未だ臨床への開発がなされていない。このような背景に基づき、国内において最初に開始された血管新生療法は、細胞治療としての患者自身の骨髄単核球細胞を移植するという形で開始された。臨床応用開始前に、多くの動物実験による前臨床試験が行われたことは言うまでもない。 2002年に、国内の遺伝子治療(HGF)・細胞治療(骨髄単核球細胞・末梢血単核球細胞・CD34陽性細胞)の臨床研究の成果が一通り報告され、この領域の次の課題が明らかにされてきた。すなわち、個別医療としての適応患者選択の問題、適応拡大の問題(特に重症虚血性心疾患に対してはどうか)、長期効果のフォーロー、より改良された血管新生療法の開発、などの問題点が浮かび上がってきた。本会では血管新生療法において今後解決していかなければならない問題などについて協議したい。

さらに内皮前駆細胞の数や機能は、様々な動脈硬化の危険因子の存在によって修飾されることが示されている。我々も FACS を用いたこれらの細胞の定量化を試みている。これまでに報告されている内皮前駆細胞の動態と動脈硬化危険因子について、自験例も含めて考察を加えたい。

世 話 人: ○中内 啓光(75330)、澁谷 正史