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シナプス後部構造のダイナミクスと活動依存的な分子集積メカニズム

学友会セミナー

学友会セミナー

2003年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成15年9月1日(月) 16:00~17:30
開催場所: アムジェンホール大会議室
講  師: 岡部 繁男 先生
所  属: 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
演  題: シナプス後部構造のダイナミクスと活動依存的な分子集積メカニズム
概  要:

近年の様々な蛍光プローブの開発とイメージング技術の進歩によって、これまで計測する事のできなかった、単一シナプス構造の動態を定量的に解析する事が可能になりつつある。シナプス形成・可塑的変化において重要な構造であるシナプス後肥厚部(PSD)に局在する分子の動態を、オワンクラゲ由来の蛍光蛋白質(GFP)をプローブとして可視化し、神経回路形成・維持過程に、どのような蛋白質がどのような時間経過でシナプス部位に集積し、その機能を発揮するに至るのかを生細胞を用いて解析した。分子可視化技術を用いた研究により、以下の様なこれまで知られていなかったPSDに存在する分子群の性質が明かになった。1)安定して存在する神経回路においても、伝達物質受容体の集積部位であるPSDは活発にその分子構成を変化させ、数時間から数日の単位で構造自体が置き換わっている。2)更にこのようなPSDの形成・消失といった構造変化は、神経シナプスの他の構成要素である、シナプス小胞や、棘突起の構造の形成・消失と同期しており、非常に短時間の内に進行する。3)また、PSDを構成する蛋白質群の動態は分子種によって異なり、動態の速い分子群の中にはその局在を神経活動依存的に変化させる分子種も存在し、かつその動態制御は個々のシナプスにおいて独立に働く。以上の結果は、シナプス後部での分子集積のスピードが予想以上に速く、かつ一旦形成されたシナプス構造も、その分子組成をダイナミックに変化させている事を示す。また、本研究で示されたシナプス構造の動的変化は、発達期の脳の機能変化の基盤となるのみならず、記憶・学習過程における神経回路網の変化とも密接に関連していると考えられる。

世 話 人: 山本 雅、○真鍋 俊也