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多能性はシグナル伝達の選択的翻訳制御によって維持されている

学友会セミナー

開催情報

開催日時 2024年2月21日(水)16:00~17:00
開催場所 1号館講堂
講師 大久保 周子
所属・職名 京都大学iPS細胞研究所未来生命科学開拓部門・特定研究員
国名 日本
演題 多能性はシグナル伝達の選択的翻訳制御によって維持されている
世話人 主たる世話人:中西 真(癌防御シグナル分野)
世話人:武川 睦寛(分子シグナル制御分野)

概要

多能性幹細胞(PSC)は分化能と無限の自己増殖能を持つ。これまで我々は、ヒトPSCを用いて翻訳因子が多能性の維持に関わること、翻訳制御を受ける遺伝子の存在を報告してきた。しかし、多能性メカニズムにおける転写因子ネットワークやシグナル伝達の研究に比べ、未だ翻訳制御の理解は進んでいない。そこで、本研究では、ゲノムワイドスクリーニングによりヒトPSCの維持に必要な遺伝子を同定し、PSCの維持に必要な翻訳開始因子EIF3Dに着目した。EIF3Dの発現抑制状態では、多能性に関わるシグナル伝達経路のバランスを壊し、多能性マーカー遺伝子が低下し多能性を損なうことが分かった。さらに我々はEIF3Dがp53の制御因子を制御することでp53の発現を低く抑え多能性状態での細胞増殖を保っていたことを明らかにした。以上より、EIF3Dによる選択的翻訳がプライムド型の多能性ネットワークの恒常性を保ち、増殖能の高い未分化状態を維持していることが明らかとなった。本研究によって、選択的な翻訳制御がプライムド型の多能性幹細胞の維持に重要であることを明らかにした。