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LPS刺激伝達におけるp38MAPキナーゼ経路の役割

学友会セミナー

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2004年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成 15年 6月 25日(金)   午後4時~午後5時半
開催場所: 1号館2階会議室
講  師: 緒方正人
所  属: 三重大学医学部医学科生化学講座
演  題: LPS刺激伝達におけるp38MAPキナーゼ経路の役割
概  要:

LPSによる刺激は、細胞内で様々なシグナルを活性化し、NF-κBやIRF-3などの転写因子に加え、 ERK、JNK、p38などのMAPキナーゼ(MAPK)ファミリーも活性化される。 p38は、もともと抗炎症薬の分子標的として見い出された経緯からも炎症制御に重要と考えられている。しかし、その生体レベルの解析は、ノックアウトマウスが胎生致死となることもあって、それほど進んでいない。 p38は、自身のCD(common docking)領域を介して、p38の活性を制御する様々な分子や、 p38によって制御される多数の基質と結合する。我々は、p38aの CD領域にsem型の点突然変異をノックインしたマウスを作成した。 sem型p38aは、基質の一部との結合性をほぼ完全に失い、p38aの下流経路の活性化が正常に起こらないと予想された。そこで、このsem型p38aノックインマウスを用い、自然免疫制御におけるp38の役割を検討した。

p38aノックアウトマウスは、胎盤形成不全で致死となるが、sem型p38aノックインマウスは生存可能であった。従って、p38aの下流のシグナル伝達系のうち、胎盤形成に関わるシグナルは正常であった。しかし、LPSに対する反応性には大きな変化を認めた。則ち、マウスにLPSを投与して生じるTNF-a産生が、 sem型p38aノックインマウスではほぼ完全に消失していた。 LPSは、TNF-aを介する肝傷害作用でマウスに致死的作用を及ぼす。そこで、D-ガラクトサミンで感作後LPS毒性を検討したところ、野生型マウスが全例死亡する条件下で、 sem型p38aマウスの半数が生存し、これは、TNF-a産生の低下によると考えられた。 sem型p38aノックインマウスのマクロファージでは、p38aの基質の一つ、MAPKAPK2の、 LPSによる活性化が消失しており、これがTNF-a産生低下の原因と考えられた。 sem型p38aノックインマウスでは、上記のTNF-a以外のサイトカイン産生や、細胞死の過程にも影響を見い出している。以上、LPSによる様々な生体反応にp38aが関与することが明らかになった。

世 話 人: ○三宅 健介、高津 聖志