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ERK経路のシステム生物学

学友会セミナー

学友会セミナー

2005年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成17年4月1日(金) 17:00~18:30
開催場所: 総合研究棟8階 セミナー室(玄関で内線75131にご連絡ください)
講  師: 黒田 真也
所  属: 東京大学大学院情報理工学系研究科・生物情報科学学部
教育特別プログラム特任助教授、さきがけ「協調と制御」
演  題: ERK経路のシステム生物学
概  要:

ERK(MAP kinase)は、外界のシグナルに依存してさまざまな活性化パターンを示し、細胞の増殖や分化などを特異的に制御する。例えば、PC12細胞においては、外界シグナルであるEGFとNGFはそれぞれERKを一過性、持続性に活性化することにより細胞の増殖と分化を制御している。現在までにERK経路を構成する分子ネットワークが明らかになりつつあるが、なぜERKが刺激に依存して多彩な活性化パターンを示すのかについては、システムレベルでの定量的な説明がなされていない。一方、ERK経路に限らず一般にシグナル伝達経路は、その要素は分子間の相互作用や酵素反応に基づいた生化学反応ネットワークである。したがって、個々の分子の相互作用に基づいてシグナル伝達経路全体を記述すれば定量的なシミュレーションモデルの作成が可能である。さらに、各分子のin vivoでの観測とin silicoの解析をお互いに密接にフィードバックさせることで、精度の高いシミュレーションモデルの作成が可能となり、シグナル伝達経路の持つダイナミクスが解析できる。そこで、我々はPC12細胞におけるERK経路にフォーカスして、そのダイナミクスをシステムレベルで解析した。まず、ERK経路のクロストークポイントのin vivoダイナミクスを計測し、これを用いてin silicoのダイナミクスをフィッティングすることにより比較的精度の高いシミュレーションモデルを作成した。さらにin silicoの解析から、一過性と持続性ERK活性化はそれぞれ刺激の速度と濃度に依存していることが予測された。この予測をin vivoで検証したところ、上記の予測に一致した応答がin vivoでも高い精度で観察された。さらに、in silicoの解析から、一過性と持続性ERK活性化はそれぞれRasとRap1の活性化ダイナミクスの違いによることが明らかとなった。この違いはRasとRap1の不活性化の機構がそれぞれ刺激依存的か非依存的であることによることを見出した。さらにin vivoの定常状態の解析結果から、その不活性化機構が異なることも見出した。したがって

世 話 人: DNA情報解析分野 宮野  悟
○機能解析イン・シリコ 中井 謙太