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転写因子CREBを中心とした記憶固定化・再固定化・消失の分子機構の解析

学友会セミナー

学友会セミナー

2003年開催 学友会セミナー

開催日時: 平成15年9月9日(火)17:00 ~ 18:30
開催場所: アムジェンホール大会議室
講  師: 喜田 聡 先生
所  属: 東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科
演  題: 転写因子CREBを中心とした記憶固定化・再固定化・消失の分子機構の解析
概  要:

情報が長期記憶として脳内に貯蔵されるには、「記憶固定化」プロセスが必要である。一方、最近、想起された長期記憶が再貯蔵される場合にも、初期固定化と類似した「再固定化」のプロセスが必要であることが示唆されているものの、「再固定化」の意義に関しては未だ不明である。本セミナーでは、これら固定化・再固定化に対する転写調節因子CREBの役割の解析結果、及び、「記憶消失」と「再固定化」との関係の解析を通して「記憶再固定化」の意義・意味を明らかにしようとする試みを紹介したい。

(1)CREBの記憶固定化・再固定化に対する役割の解析:前脳においてCREBの活性を薬剤投与により誘導的に阻害可能なトランスジェニックマウスを利用して、CREBの記憶固定化・再固定化に対する機能的役割を解析した。その結果、恐怖条件付け文脈学習などの解析から、CREBが記憶の固定化・再固定化のプロセスに必須であることが示された。また、活性化型CREBを高発現するトランスジェニックマウスの解析から、CREBの活性が高まると記憶がより強く固定されることが明らかとなった。以上より、CREBは記憶固定化の強弱を調節する「Molecular Switch」として機能することが示唆された。
(2)記憶再固定化と消失の関係の解析記憶消失は、条件付け成立(記憶固定化)後に、条件刺激のみを与えられた場合に、条件付けの意味がなさないことを再学習するプロセスである。一方、記憶固定化も条件刺激を与えられて、記憶が想起された場合に観察される現象である。そこで、条件付け成立後の条件刺激を与える時間と「再固定化」・「消失」との関係に関して、恐怖条件付け文脈学習及びモリス水迷路を用いて解析した。その結果、条件刺激を与える時間が短ければ「再固定化」、長ければ「消失」といったように、この時間に長さに応じて二つのプロセスの優先性が決定されることが明らかとなった。
世 話 人: 山本 雅、○真鍋 俊也